韓国の人権デューディリジェンス義務化に向けた動き
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12年にわたって韓国政府は、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)および第3次までの国別行動計画の実施に自主的に取り組んできましたが、韓国企業はいまだに人権保護のための最低限の国際基準を達成できていません。急速に変わりつつある世界の規制環境の中で、韓国企業および同国の投資家の国際的なパフォーマンスと評判を高めるには緊急に対策を講じる必要があります。
今回の報告書では、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)の「Social Transformation Baseline Assessment」とKnowTheChainのICTベンチマーク評価という2つの信頼できるグローバルベンチマーク評価で得られたデータを調査するとともに、人権侵害が疑われる17の事例について分析しました。
主な調査結果
- 平均すると、WBAの各中核社会指標(Core Social Indicator)を完全に満たしている韓国企業は3分の1に留まりました。
- 特に懸念されるのはステークホルダー・エンゲージメントの実態で、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメントに関するWBAの指標を完全に達成している韓国企業はたったの3%でした。
- 韓国企業の3分の2(65%)が、KnowTheChainが評価する最も基本的な人権デューディリジェンスの措置に関してスコアを獲得できませんでした(スコア0)。
- 国内外の労働組合とのエンゲージメントについて報告している企業はありませんでした。
- サプライチェーンにおける人権リスク評価の実施について報告している韓国企業はわずか3分の1でした。
- 一次サプライヤーの一覧を開示している企業はわずか3分の1でした。
世界では、多くの地域で生態系の崩壊と社会的・地政学的緊張の高まりが同時に起きている中、規制および投資を巡る環境は急速に変化しています。欧州連合による新たな規制の動きを足がかりに、韓国政府にとっては、アジアでリーダーシップを発揮するとともに、韓国企業を人権デューディリジェンスの義務化によって持続不可能な不平等や環境被害への対処が避けられなくなる未来にふさわしい存在とするチャンスです。人権デューディリジェンスを義務付ける法律は万能薬ではありません。それでもなお、韓国の企業や投資家が、ディーセントワーク、生活賃金、コミュニティの尊重、環境再生を通じて、さらなる繁栄の共有、人間の尊厳および自由に貢献できる機会を大きく広げるものに違いありません。
提言
第4次国別行動計画は、韓国における人権デューディリジェンス義務化法成立に向けた確かな青写真としてふさわしいものでなければなりません。そのために以下が必要です。
- 人権を保護するための一貫した効果的な措置を企業に義務付けるために不可欠な強制的アプローチを採用し、任意による人権デューディリジェンスの実施では不十分であるとの認識が必要です。
- コミットメントの表明および制度の整備に留まらず、特定された人権リスクについて透明性の高い対応が求められます。
- 人権および環境の主要なリスクが確実に特定され、その対応がなされるためには、人権擁護者や労働組合、労働者の正当な代表をはじめ、サプライチェーン全体の権利保有者との積極的なエンゲージメントを実施する必要があります。
- それぞれの状況に応じて対処するとともに、紛争地域で事業を行う企業に対してはデューディリジェンスの強化が必要です。
- 適切な対応を取らない企業の取締役や役員の姿勢に働きかけるため、民事上の責任や罰則金を科すことが求められます。
- 司法的・非司法的手段を通じて、人権侵害の被害者が適切かつ効果的な救済制度にアクセスできるようにする必要があります。