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抑圧される市民の力:2023年の人権擁護者&ビジネス

平和的な市民的不服従を実践する環境活動家たちに対し、現在行われている弾圧は、民主主義と人権に対する大きな脅威です。環境上の緊急事態は人類全体に迫る問題であり、何十年にもわたって科学的に裏付けられています。それにもかかわらず、その脅威に警鐘を鳴らし、対応を求める人々が犯罪者扱いされてしまっては、問題に対処することなどできません。平和的な環境保護活動や市民的不服従に対する現時点で唯一正当な対応は、政府当局、メディア、そして一般市民が、環境保護活動家の発言に耳を傾ける重要性を認識することなのです」

— ミシェル・フォースト(オーフス条約に基づく環境擁護者に関する国連特別報告者)

2023年、世界各地の街角で人々はクリーンで健康、かつ持続可能な環境に対する自分たちや未来の世代の権利を守るよう政府に要求しました。利潤の最大化と持続不可能な資源の採取・消費に立脚した経済パラダイムに駆り立てられた人類の活動は、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)をすでに超えつつあります。現状のやり方を続けていては、人類がこの先何世代にもわたって発展・繁栄しつづけることは不可能だと科学的にも実証されているのです。気候変動、汚染、生物多様性の損失という地球規模の3つの危機は、私たちのすべての権利を脅かしています。人権擁護者は、直接的な行動を起こす化石燃料プロジェクトから自分たちの土地や領地を守る環境汚染を報告する環境破壊を行った企業を提訴するといった活動を通じて、人権の尊重・保護・実現によってのみ真の気候正義は達成されると主張し続けています。

それにもかかわらず、ビジネスと人権リソースセンター(以下、リソースセンター)は2023年、企業が関与する人権侵害や環境被害に懸念を表明した人々への630件の攻撃を記録しました。2015年1月以降では、同様の攻撃が5,300件以上も記録されています。これは、人権と地球環境を守るために行動する人権擁護者に対する攻撃が、世界各地で一貫して続いていることを示しています。

企業や投資家には、クリーンで健康、かつ持続可能な環境を享受する権利を含む人権を尊重する責任があり、利益よりも人々と自然を優先することで、社会に大きなプラスの影響をもたらすことが期待されています。一部の企業はすでに、公正な交渉、繁栄の共有、人権の尊重を柱とするプロジェクトを構築することで、これが可能であることを実証しています。また、長年の市民社会からの要望を受けて、一部の政府や企業では、人権擁護者の保護や開かれた市民社会スペースに向けた取り組みに注力しはじめています。ただし、残念ながらこうした動きは例外的なものです。多くの企業は人権を尊重する責任をいまだ果たしておらず、その結果、人々や地球に悪影響をもたらしています。さらには、企業が権力を行使して、企業活動による害について発言する人々の力を削ぎ、攻撃し、市民の自由(表現、結社、集会の自由)の行使を抑制しようとする事例も少なくありません。

こうした現状から、人権を保護するためには企業の自発的な行動だけでは不十分であることは明らかであり、各国は早急に人権および環境デューディリジェンスを義務づける強固な法律を制定する必要があります。各国はまた、人権を安全に擁護する権利と、公正で持続可能な未来を実現するうえで人権擁護者の果たす重要な役割を認める法律を制定、実施しなければなりません。

2015年1月から2023年12月までに、リソースセンターは、企業による人権侵害や環境被害に懸念を表明した人権擁護者に対する5,300件以上の攻撃を世界中で記録しました。

2023年だけでも、630件の攻撃が確認されており、推定2万人が直接影響を受けました。確認された攻撃の4分の3以上(78%)は、気候、環境、土地の権利を守るために行動している人々に対するもので、多くは政府主体によるものでした。

調査結果は氷山の一角に過ぎません。

この追跡調査は公開された情報に基づいていますが、攻撃の大半、特に殺害以外の非致死的攻撃(殺害予告、司法ハラスメント、身体的暴力など)がメディアに取り上げられることはなく、政府による攻撃の監視体制にも大きなギャップがあるため、実際の問題は報告された数字よりもはるかに深刻です。また、「攻撃」が1件と報告されていても、公開情報に名前が掲載された1人に対する攻撃もあれば、バングラデシュで賃上げに抗議した1万1,000人の縫製労働者への告訴の例のように、身元不明の多数の人々に対する攻撃もあります。そのため、実際に攻撃を受けた人権擁護者の人数は、ここで報告する攻撃の件数を大きく上回っています。こうした攻撃は、擁護者の身体的な安全にとどまらず、精神的・感情的・経済的幸福にも影響を及ぼし、被害者本人だけでなく、家族、コミュニティ、さらには抵抗運動そのものにも悪影響を与えることがあります。さらに、こうした攻撃が人権擁護活動全般に広く深刻な打撃を与える可能性もあるのです。追跡調査の方法についてはこちらをご覧ください。

世界の概況

2015年に追跡調査を開始して以来、擁護者にとって最も危険な地域は一貫してラテンアメリカ&カリブ海地域アジア&太平洋地域となっています。2023年には、攻撃の41%がラテンアメリカ&カリブ海諸国(258件)で、30%がアジア&太平洋地域(195件)で記録されました。

2023年、企業に関連する人権侵害や環境破壊について懸念を表明した擁護者に対し、最も多数の攻撃が記録されたのは、ブラジル(68件)、インド(59件)、メキシコ(55件)、ホンジュラス(44件)、フィリピン(36件)、米国(27件)、イラン(24件)、コロンビア(22件)、インドネシア(18件)、ウガンダ(18件)、フランス(16件)、英国(15件)でした。

攻撃の種類

人権擁護者に対する攻撃は、市民社会スペースに対する直接的な攻撃であり、持続可能で包摂的かつ平和な社会を支える基本的自由に対する侵害でもあります。持続可能な開発目標(SDGs)の目標16は、平和で包摂的な社会を推進することを目的としており、指標16.10.1では、人権擁護者の殺害や攻撃の数を記録することが、こうした基本的自由の享受度を測るグローバル指標になると定めています。しかし、2015年以降、SDGsの進捗状況を報告する自主的な国別評価を提出した162カ国のうち、人権擁護活動家の殺害または攻撃を1件以上報告したのはわずか3ヶ国(2%未満)で、7ヶ国は0件と報告し、94%の国からは報告が一切なされていません。

殺害

各国からの報告とは対照的に、リソースセンターは2023年だけでも、企業活動による害に声を上げた人権擁護者87人の殺害を記録しています。私たちは、彼らの命と勇気、そして重要な活動を称えたいと思います。彼らに対する攻撃は捜査されるべきであり、加害者は法的に裁かれなければなりません。しかし、残念ながら、擁護者に対するほとんどの攻撃(致死的および非致死的)は捜査されることもなく、罰を受けることもなく、不処罰の慣行が横行し、さらなる攻撃を助長しています。

最も頻繁に記録されている攻撃の種類

「もし私たち全員がアマゾンを守ることをやめ、恐怖に屈して告発から手を引いてしまったら、残された人々の未来を想像できますか?彼らは伐採業者や麻薬密売業者のなすがままにされるでしょう。やめるということは容易いことではないのです」

– キント・イヌマ・アルバラド、 Mongabay 2022

クイント・イヌマ・アルバラードはペルーのキチュワ族の著名な人権擁護者であり、サンタ・ロシージョ・デ・ヤナヤクコミュニティのリーダーです。彼は自身のコミュニティを代表して国内外のフォーラムに参加し、アマゾンの先住民族に対する脅威について情報を共有し、人権保護のための効果的な対策を提唱してきました。彼とそのコミュニティのメンバーは、自分たちの土地での違法な企業活動や森林伐採に抗議してきましたが、その結果、2017年以来、殴打、誘拐、殺害予告などの攻撃を受けています。

Quinto Inuma, 2019

Vicki Brown, FPP

クイントは、オンブズマン事務所や共和国議会に保護を求め、米州人権委員会にコミュニティの事例を提出しました。また、ペルーで初めて、法務省の「人権擁護のための議定書」に基づく早期警告メカニズムを他の人権擁護者とともに構築し、その後「部門間メカニズム」も導入しましたが、それらの措置は十分に効果をあげることはできませんでした。彼は、環境問題特別検察庁(FEMA)や麻薬対策検察庁にも対応を求めましたが、検察手続きは、人員不足と、サンタ・ロシージョ・デ・ヤナヤクの治安が悪いという警察の報告により、10回以上遅延・延期され、なかなか進みませんでした。

Quinto Inuma, Peru

Santa Rosillo de Yanayaku

2023年11月29日、クイントはウカヤリで開催された環境擁護者向けセミナーの帰途、フードをかぶった男たちに殺害されました。彼の死は、先住民擁護者が直面する深刻なリスク、より強力な保護措置の緊急な必要性、自己決定権、土地所有権、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意の権利などアマゾンの先住民の権利を守るための早急な行動の必要性を浮き彫りにしたとCOP28やその他の国際フォーラムで彼の同僚は指摘しました。2024年2月4日、2人の地元当局者を含む犯罪組織 Los chacales de Santa Rosilloのメンバーが、クイント殺害の容疑者として逮捕されました。また、不法薬物取引や違法伐採による森林破壊を助長したとして拘束された者たちに対する刑事訴訟手続きもいくつか進行中です。違法伐採によって調達された木材は、しばしば企業のサプライチェーンに流れ込んでおり、世界で取引される木材の15~30%は違法に調達されていると推定されています。

「私たちは無期懲役を求めています。更生は無理でしょう。家族は崩壊し、家も失いました。 もし政府がもっと早く行動していれば、父は死なずにすんだはずです......。

私たちは、父が常に望んでいた遺産を引き継ぎます、なぜなら、父がずっと闘ってきたのは、決して個人的な利益のためではなく、私たちのコミュニティのすべての人と、世界の森を守るためなのです。父が森林伐採から守ろうと闘った土地は2万3千ヘクタール以上に及びます...」 - クイントの長男、ケビン・イヌマ、infobae

非致死的攻撃

威嚇、脅迫、監視、中傷キャンペーン、司法ハラスメントを含む非致死的攻撃は、しばしば、後の殺害につながります。だからこそ、各国政府は擁護者に対する攻撃のデータを収集し、その保護メカニズムを強化することが不可欠なのです。非致死的攻撃は、被害者本人、その家族、地域社会を威嚇し、活動の中止を強いる手段として利用され、人権擁護活動全般に広く深刻な影響を及ぼし、コミュニティの社会的基盤に悪影響を与える可能性があります。

リソースセンターは、2015年以降、137カ国において、企業活動による害に対抗する擁護者への非致死的攻撃4,436件を追跡してきました。そして、これは氷山の一角に過ぎません。2023年に追跡された非致死的攻撃には、恣意的な拘束(157件)、身体的暴力(81件)、脅迫・恫喝(80件)、市民参加に対する戦略的訴訟(38件)が含まれ、追跡した事例の86%を占めていました。

市民の抗議と市民的不服従に対する弾圧

バングラデシュで生活賃金を求める縫製労働者への攻撃から、パレスチナ人の権利を支持して行動する人々の弾圧まで、世界中で政府が市民の抗議権を制限しています。多くの国では、集会の自由を制限する新たな法律が採択されたり、既存の法律を利用した公正な移行を擁護する気候変動活動家の取り締まりが行われています。現在、世界人口のほぼ3分の1が市民社会スペースの制限がある国に住んでおり、大きな制約を受けずに結社、デモ、反対意見の表明の自由を享受しているのは世界人口のわずか2%で、これは5年前の約4%から減少しています。

世界中で、主に若者をリーダーとした市民たちが、直接行動や市民的不服従など多様な戦略を用いて、クリーンで健康、かつ持続可能な環境に対する権利を守るという国の義務を早急に果たすよう政府に働きかけています。市民的不服従(道路や交通を封鎖する、政府関係者の事務所を占拠する、企業の設備に物理的に介入するなど、意図的に公共の利益に反する法律違反行為を公然と非暴力で行うこと)は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)の第19条および第21条で保障された表現の自由と平和的集会の自由の行使の一形態です。グリーン経済への公正な移行には、これらの権利の尊重が不可欠です。多くの企業は事業開始前に関係者との協議を十分に行っていないため、抗議行動が事業に関連するリスクや被害を訴える唯一の手段となっています。こうした人権や環境に関するリスクを理解することは、被害を軽減し、迅速かつ公正な移行を実現するために重要です。

Mamunur Rashid via Shutterstock (licensed)

2023年、私たちは、カナダのコースタル・ガスリンク・パイプラインに反対する先住民擁護者の逮捕(TCエナジー社からのコメントはこちら)、オーストラリアでの石炭生産に抗議する活動家数十人の逮捕、米国でのマウンテン・バレー・パイプラインに抗議する活動家に対する司法ハラスメント(マウンテン・バレー・パイプライン社からの回答はこちら)など、気候変動対策を促すために市民的不服従を行使する人々に対する攻撃を数多く記録しました。

国連オーフス条約による環境擁護者に関する国連特別報告者ミシェル・フォーストは、2024年2月に発表された最新の報告書の中で、平和的な環境抗議行動や市民的不服従に対する弾圧や犯罪化の傾向が、特にEU全域で、メディア報道、政治的言説、法律や政策、法執行、裁判に至るまで様々な形で確認されており、これは民主主義と人権に対する大きな脅威であると指摘しています。

2023年10月23日、カナダ資源開発大手ファースト・クォンタム・ミネラルズ社の子会社であるミネラ・パナマ社が運営する中米最大の露天掘り銅鉱山での銅開発契約が国民議会で承認されたことに対して、当初の採掘契約の違憲性を理由に抗議活動が発生しました。この抗議活動で少なくとも30人の活動家が逮捕され、2024年初頭、逮捕者のうち21人がテロ容疑で起訴されました。

Protest against copper mining in Panama, 2023

Carolina Soto Ramos, Shutterstock (licensed)

2023年10月に抗議行動が始まって以来、警察の過剰な武力行使により、ジャーナリストで活動家のオーブリー・バクスターが片目を失うなど、数人が負傷しました。2023年11月1日、パナマ教師協会(Asoprof)のメンバーであるディオゲネス・サンチェスが、抗議行動への積極的な関与により警察に逮捕されました。さらに11月7日には、アブディエル・ディアスイバン・ロドリゲスが銃撃され死亡しました。リソースセンターは、ミネラ・パナマ社とファースト・クォンタム・ミネラルズ社にコメントを求めましたが、回答はありませんでした。

セクターの概要

人権擁護者への攻撃は、世界中のあらゆる地域で、ほぼすべてのビジネスセクターで発生しています。2015年1月に擁護者への攻撃の調査追跡を開始して以来、最も攻撃件数が多かったセクターは、鉱業(1,475件)、農業関連ビジネス(984件)、石油・ガス・石炭産業(491件)です。これらのセクターは地球環境の危機を加速させている一方で、移行鉱物(transition minerals)の採掘や再生可能エネルギーへの投資において重要な役割を担っており、エネルギー移行が公正に進むかどうかに大きな影響を与えます。2023年の調査でも同様の傾向が見られ、攻撃件数は鉱業が165件農業関連ビジネスが117件石油・ガス・石炭産業が112件となっています。

人権擁護者への攻撃と企業の関連性を示す公開情報は限られており、多くが記録されていないため、実際の件数はこれ以上である可能性が高いでしょう。

移行鉱物の採掘

国際エネルギー協会の予測では、クリーンエネルギー技術への世界的なシフトを支えるために、2040年までに移行鉱物の需要が6倍に増加すると指摘されています。そのため、鉱山会社は、擁護者に対する攻撃を容認せず、加担しないという公約を採択し、その公約を実施することが急務です。また、エネルギー移行に重要となる世界の資源基盤の半分以上は、先住民族の土地やその近くにあるため、鉱山会社は先住民族の権利を十分に尊重する必要があります。

先住民族はまた、気候危機の影響を真っ先に受ける人々であり、エネルギーを利用できない農村部の貧困層の大きな部分を占めています。先住民族は、自己決定権、土地と領域および資源に対する権利、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)などの人権を尊重する再生可能エネルギーへの移行を支持しています。

FPICは、現在の業界慣行のように単なる利害関係者の関与や協議のプロセスを指すのではなく、先住民族自身の手続きに従った自己決定権の表明を指します。FPICは国際法で認められた保護措置であり、先住民族の文化的アイデンティティ、土地、領土、資源を含む権利の実現を保証することを目的としています。

リソースセンターの移行鉱物トラッカーは、ゼロ・カーボン移行に不可欠な主要鉱物を生産する世界的な企業に対する人権侵害の申し立てを追跡調査しています。このデータから、移行鉱物を生産している企業の多くが、市民社会団体やそのリーダーへの攻撃を含む地域コミュニティへのリスクや悪影響に向き合っていない実態が明らかになっています。世界的な気候危機の影響が拡大する中、特に先住民族や社会から孤立したコミュニティが犠牲にならない形でエネルギー移行を進めることが極めて重要です。

移行鉱物のひとつであるボーキサイトは、アルミニウムの主要な原料であり、エネルギー移行の実現に不可欠なさまざまなクリーン技術の主要な資源です。たとえば、ハイブリッド車や電気自動車の生産による運輸セクターでの利用拡大や、太陽光発電(部品の85%がアルミニウム)の開発によるエネルギーセクターでの利用拡大が見込まれています。

アルミニウムの需要は2050年までに倍増すると予測されていますが、ボーキサイトの埋蔵地の94%は先住民や小作農の土地と重なっています。さらに、世界のボーキサイト埋蔵量の約44%は、脆弱または非常に脆弱な国家に位置しており、そのうち68%は汚職が多い、または非常に多い国と認識されています。また、ボーキサイトの採掘は環境悪化の原因にもなっています。世界の排出量の10%を占める採掘セクターのうち、現在行われているボーキサイト採掘事業が2%を占めています。こうした状況から、ボーキサイト採掘に関連する人権および環境リスクを特定し、軽減することは急務です。人権の尊重、受け入れコミュニティを対等なパートナーとして認識すること、そしてグローバル・ノース諸国による移行鉱物の需要抑制へのコミットメントを、政策立案、投資決定、事業運営に反映していく必要があります。

インドは世界第6位のボーキサイト生産国で、世界生産量の約6%を占めています。ボーキサイトはオディシャ州を含むいくつかの州で採掘されています。先住民コミュニティは、オディシャ(オリッサ)州におけるヴェダンタ・リソーシズ社、アダニ・グループ社、ヒンダルコ・インダストリーズ社が計画中のボーキサイト採掘プロジェクトに長年にわたり反対しており、プロジェクトに関連する人権侵害や環境リスクへの懸念を表明してきました。リソースセンターがこれらの企業にコメントを求めたところ、各社は反対の声があったことなどを否定しました(回答はこちら)。

ボーキサイト採掘に抵抗するコミュニティ主導の組織のひとつが、ニヤムギリ・スラクヤ・サミティ(NSS)です。2023年8月、NSSのクルシュナ・シカカバリ・シカカが警察に拉致され、NSSの他の9人のメンバーは仲間の拉致に抗議したため不法集会の容疑で告発されました。これらの擁護者は、ラッダ・シカカドレンジュ・クルシュカマヌ・シカカサンバ・フイキアリンガラジ・アザドゴビンダ・バグウペンドラ・バグブリティッシュ・ナイクレーニン・クマールです。2023年8月16日、NSSの他の3人のメンバー、ダンフル・マジシタラム・マジアニル・ナヤックも逮捕されました。

さらに2023年10月16日、オディシャ州政府は資源大手ヴェダンタ・リソーシズ社が提案したシジマリ・ボーキサイト採掘プロジェクトに関する公聴会を開催しました。公聴会に向かう途中、プロジェクトに抗議していたバンテジ村の女性数人が警察に殴打されました。公聴会では、採掘プロジェクトを公然と批判したディバカール・サフジテンダー・マジが逮捕されました。市民団体によると、このプロジェクトによって18の村から100世帯の移転が必要となり、さらに500世帯の生計に影響を及ぼす可能性があるとのことです。2023年11月、リソースセンターはヴェダンタ・リソーシズ社にコメントを求めました(回答はこちら)。2024年5月、ヴェダンタ・リソーシズ社は追加の回答を提供しました(回答はこちら)。

主要な気候変動イニシアティブに関連する人権擁護者への制限

COP気候サミットや公正なエネルギー移行パートナーシップ(JET-P)では、交流のために開かれた空間と人権擁護者の保護が必要であり、先住民族はエネルギー移行を迅速かつ公正に進める上で重要な役割を果たします。

Nega Pataxo

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)と市民社会スペースの制限

Nega Pataxo

国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)と市民社会スペースの制限

近年の懸念すべき傾向は、市民社会スペースが深刻な脅威にさらされている国々がCOP気候サミットのホスト国に選ばれていることです。人権擁護者が安全に抗議や懸念を表明できなければ、気候サミットは、気候正義、公正な移行、気候の影響に対する企業の責任を推進する上で極めて重要な声や解決策を封じ込めてしまう危険性があります。

2024年12月、COP29はアゼルバイジャンで開催されます。市民社会組織の国際ネットワークCIVICUSの評価で、アゼルバイジャンは「閉鎖的」(スコア16/100)とされており、市民社会スペースは確保されていません。2022年の人権とビジネス賞は、アゼルバイジャンの石油労働者の権利保護団体(OWRPO)に授与されました。OWPROは、この閉鎖的環境で、石油・ガス産業労働者の権利を擁護し、大規模な石油・ガスプロジェクトの公的監視を要求している団体です。国連ビジネスと人権作業部会、アムネスティ・インターナショナル、その他多くの人権団体も、過去10年間にわたり、アゼルバイジャンにおけるビジネスと人権問題に取り組む擁護者に対する制限や、市民社会に対する迫害や嫌がらせについて深刻な懸念を表明してきました。

リソースセンターは、2023年にアゼルバイジャンで、銅と亜鉛という2つの重要な移行鉱物を生産しているアングロ・アジアン・マイニングPLC社のゲダベック鉱山に関連する8件を含む13件の擁護者に対する攻撃を記録しました。リソースセンターはアングロ・アジアン・マイニングPLC社にコメントを求めましたが、回答は得られませんでした。

COP30は、企業活動による人権侵害や環境汚染に反対する擁護者にとって2022 年と 2023 年に最も危険な国とされた、ブラジルで開催されます。ブラジルのルーラ大統領率いる政権は、発足1年目で、アマゾンの環境保護や女性の権利保護などにおいて重要な進展を遂げました。しかし、森林伐採の急増や先住民族への攻撃の倍増につながった、ボルソナロ前大統領が残した二極化、反環境、反先住民の姿勢は、新政権にとって克服すべき厳しい課題となっています。バイア州南部の土地紛争を監視する危機管理内閣を設置したソニア・グアジャハラが率いる先住民省の創設は、2023年の明るい兆しだと言えるでしょう。

ルーラ政権は、生物多様性の保護と森林伐採の削減を公約していますが、ブラジルの先住民や環境保護活動家の権利が保護され、彼らのリーダーシップが尊重されなければ、この公約は達成できないでしょう。

バイア州南部のパタクソ先住民族コミュニティに対する攻撃は2023年を通して記録されています。暴力組織関係者、地主、農場主(多くの場合、警察や武装勢力が後ろ盾になっている)が、パタクソ族コミュニティの土地を農業関連ビジネスに利用するために侵害しています。この地域の農業セクターの大地主は、司法の許可なく、土地を占有している人々を排除することで知られており、農民の民兵組織「ゼロ・インベイジョン」を結成し、攻撃を行った容疑で現在捜査されています。2024年1月には、こうした違法な土地収奪に際して、「ネガ・パタクソ」として知られる精神的指導者マリア・デ・ファティマ・ムニスが殺害されました。

2023年5月30日、ピックアップトラック6台とローリー1台が、パタクソ族が最近奪還した先住民領バラ・ヴェーリャ地区に到着し、コミュニティに発砲しました。男性1人が背中を撃たれました。バラ・ヴェーリャ先住民領は、パタクソ族のいくつかの村から構成されており、2000年代初頭から激しい紛争に見舞われてきました。2023年1月には先住民擁護者であるサミュエル・クリスチアーノ・ド・アモール・ディヴィーノナウィ・ブリト・デ・ジーザスがこの地区で殺害されました。

Indigenous Peoples and the Just Transition conference 2024 - Sonia Guajajara

気候変動対策における先住民に対する権利侵害と犯罪化

Indigenous Peoples and the Just Transition conference 2024 - Sonia Guajajara

気候変動対策における先住民に対する権利侵害と犯罪化

「先住民族は気候問題の解決に不可欠な関係者です。気候危機への対応は、自然の管理者であり、生物多様性の保護者である先住民族とのパートナーシップに基づいて行われなければなりません。私たちは、先住民の犯罪化を止め、彼らの集団的・個人的権利を尊重しなければならないのです」 -ジョーン・カーリング、国際先住民権利協会(IPRI)

2023年に記録された攻撃の5分の1以上(22%)が、世界人口の約6%でありながら、世界に残る生物多様性の80%以上を保護している先住民擁護者に対する攻撃でした。また、4分の3以上(78%)はラテンアメリカで発生しました。

2015年1月以来、リソースセンターは世界中で先住民擁護者に対する1,000件以上の攻撃を記録しました。攻撃された先住民擁護者の93%は自分たちの土地と領土、気候および/または環境に対する危害について懸念を表明しています。また、リソースセンターはIPRIと共同で制作した2022年ブリーフィングで、気候変動を緩和し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する目的で制定されたプロジェクトのなかに、先住民族の権利と安全を脅かすものがあることを指摘しています。たとえば、再生可能エネルギープロジェクト、移行鉱物採掘、自然保護イニシアチブなどが、先住民族の土地、領土、資源、食料、水、FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)、文化的伝統と慣習、権利擁護に対する先住民族の集団的権利を侵害している事例があります。

何千年もの間、環境スチュワードシップに携わってきた先住民は、地球を守るために欠かせないリーダーです。また、気候変動の原因にはほとんど貢献していないにもかかわらず、気候変動の直接的な影響を最初に経験する集団のひとつでもあります。企業は、先住民族の自己決定権と、先住民族が自身で定義したFPIC(拒否する権利を含む)を行使する権利を尊重すべきです。国家は、先住民やアフリカ系住民の権利を保護する法律を制定し、実施しなければなりません。

先住民族や農村のコミュニティ、政府の支援を受けた先進的な企業や投資家が、先住民族のリーダーシップを認め、繁栄の共有を実現している再生可能エネルギープロジェクトの先行事例がすでに存在します。こうした事例は、そうしたアプローチが可能であるだけでなく、有益であることを実証しています。このようなプロジェクトの設計では「トリプルウィン」が約束されています。つまり、コミュニティや労働者は、人間らしい暮らし、長期的な収入源、環境保護、コミュニティ内でのプロジェクトの管理権を得ることができ、投資家や企業は安定した投資環境を得て、地球は迅速なエネルギー移行への取り組みにより、気候の安定を取り戻すことができるのです。特に先住民の土地の権利が適切に保護されている国では、先住民コミュニティがこうしたモデルを先導している例が多くみられます。

たとえば、カナダ東部のネコトクック先住民族は、ウォカウソン・エナジー・プロジェクトの株式の51%を、ナチュラル・フォース社(49%)と共同で保有しています。ナチュラル・フォース社は、太陽光発電や風力発電プロジェクトで先住民族コミュニティと提携することで事業を拡大してきた再生可能エネルギー企業です。このプロジェクトは、初年度に40万米ドル以上を地域社会にもたらし、次年度にはその額はさらに倍増する予定です。この収益の一部は、コミュニティのインフラ、主に住宅の過密状態解消に使われています。企業、投資家、政府には、正義と公平性に基づいてエネルギー部門を再構築する機会を提供する機会として、このような人権に基づく共有/持分モデルを支援する取り組みを強化することが求められます。

EV supply chains 2023

公正なエネルギー移行パートナーシップ(JET-P)

EV supply chains 2023

公正なエネルギー移行パートナーシップ(JET-P)

英国グラスゴーで開催されたCOP26で発表された「公正なエネルギー移行パートナーシップ」(JET-P)は、石炭依存度の高い新興国のクリーンエネルギーへの移行を支援するため、数十億ドルの資金を提供するものです。最初のパートナーシップは南アフリカ、インドネシア、ベトナムの3カ国で締結されました。

気候危機を緩和するためには、石炭から再生可能エネルギーへの全面的な移行を支援するための資金提供が不可欠です。また、この移行は権利を尊重したものでなければならず、政府が人権擁護者の権利を確実に保護することが重要です。インドネシアは、特にパーム油や鉱業関連の事業による人権侵害について懸念を表明する擁護者にとって、最も危険な国のひとつです。一例として、インドネシアの北マルク州にあるハルマヘラ島では、未接触部族のホンガナ・マニャワ族がニッケル採掘から慣習的な領土を守ろうと闘っています。PTウェダベイニッケル社のニッケル採掘活動は、ホンガナ・マニャワ族が住むハルマヘラ島の熱帯雨林の広大な地域に影響を及ぼしています。孤立部族や未接触部族はFPICを与えることができないため、彼らの領土での採掘は国際法上違法です。Climate Rights International(CRI)の最近の報告書では、ニッケル採掘・製錬事業地の周辺に住む人々へのインタビューにより、採掘・製錬事業によって彼らの土地の権利、伝統的な生活様式を実践する権利、清潔な水を得る権利、健康に対する権利が著しく脅かされていると指摘されています。さらに、土地の売却を拒否したり、プロジェクトに関連する被害について懸念を表明したコミュニティメンバーは、警察や企業の代表者による脅迫、威嚇、報復を受けたと報告しています。CRIは報告書に記載された企業に連絡をとっており、得られた回答は付録1に記載されています。リソースセンターはCRIに回答しなかった企業にも連絡を取り、そのうちPOSCOのみが回答しました(回答はこちら)。

2022年12月、ベトナム政府は英国、米国、その他のG7諸国とJET-Pを締結しました。しかし近年、ベトナム政府は環境問題を提起する人々を標的にし、犯罪化する動きを強めています。ベトナムでは市民社会スペースが大きく制限されているため、攻撃の規模に関する公的情報にアクセスすることは困難です。しかし、2021年以降、政府は曖昧な法律を利用し、気候変動問題に取り組む指導者や専門家6人を拘束・投獄し、多くの環境保護団体を閉鎖に追い込んでいます。標的とされた6人のなかには、政府の石炭火力への依存を減らすために取り組み、太陽光発電による解決策を研究していたグイ・ティ・カイン(16ヶ月間投獄)、環境汚染から地域社会を守り、プラスチック廃棄物を段階的に削減し、クリーンエネルギーへの移行を法的に支援するために尽力していた著名な環境弁護士ダン・ディン・バック(5年の刑期で服役中)、オバマ財団の奨学生で、クリーンエネルギーと野生生物保護に取り組む環境団体「CHANGE Vietnam」創設者のホアン・ティ・ミン・ホン(3年の刑期で服役中)が含まれます。最近では、2023年9月に、ベトナムのエネルギー移行を目指す社会的企業イニシアチブ(VIETse)のエグゼクティブ・ディレクターであるゴー・ティ・トゥー・ニエンが「情報や文書の流用」の容疑で逮捕され、現在公判前勾留中です。

市民社会が企業プロジェクトに関連する人権や環境リスクを監視し、公正な移行の実現に自由に関与できなければ、JET-Pの成功はありえません。

多くの攻撃は、国家、企業、その他の非国家主体(たとえば、犯罪組織)が共謀しており、不処罰が横行する状況で発生しています。そのため、加害者の特定は多くの場合困難です。

2023年では、攻撃の直接の加害者は、警察と司法制度が最も多く、次いで軍/武装勢力と、ほとんどが国家主体でした。しかし、企業が攻撃に関与しなかったわけではありません。2023年に記録された630件の攻撃すべてにおいて、擁護者たちは企業に関連した実際のあるいは予測される被害について懸念を表明しており、50%の事例で特定の企業が言及されています。

さらに、企業は自社の事業や業界に対する批判的な意見や異議を唱える行為が攻撃のリスクにさらされていることを認識し、こうした攻撃の防止と軽減に取り組む必要があります。もし企業関係者が擁護者への人権侵害を引き起こしている、あるいは助長しているのであれば、その責任は明確で、その人権侵害を阻止し、対処・救済しなければなりません。企業や投資家と攻撃との間に明白な直接的関係がない場合であっても、企業活動、サプライチェーン、取引関係、および/または投資を行っている事業主体は、擁護者の権利と市民の自由の尊重を促進するために、積極的にその影響力を行使することが期待されます。また、市民の自由に対する制限は、投資や企業活動にとってリスクが高い状況であるという警告でもあり、「情報のブラックボックス」を生み出し、堅牢な人権デューディリジェンスの実施を困難にします。

民間セクターのアクター

国家主体が直接の加害者である場合でも、企業はしばしば人権擁護者への攻撃に関与しています。これは、平和的な抗議活動を鎮圧するために警察や治安部隊を呼んだり、監視活動を可能にするサービスや製品を提供するなどして国家による弾圧に協力したり、組合結成を妨害するなどの行為を含みます。企業が土地や資源の支配権を得るために、コミュニティを分断したり、協議プロセスを十分に行わないなどの戦術を用いることで、紛争や攻撃を引き起こすこともあります。

企業による乗っ取り(企業が自らの利益のために政治的影響力を使って国家の意思決定に影響を与えること)は、世界中で広く見られます。たとえば、環境保護規制に反対するためのロビー活動、抗議権を制限するために議員と共謀して法案を作成する、企業の利益のためにガバナンスの不備を利用するなどの行為が含まれます。

また、民間セクターが自らの利益のために司法制度を悪用することもあります。その一例が、市民参加を妨害するための戦略的訴訟(スラップ)です。私たちは2023年、スラップの特徴がみられる38の訴訟を特定しました。

2023年6月、リチウム・ネバダ社(リチウム・アメリカズ傘下)は、米国ネバダ州にあるサッカー・パスのリチウム鉱山の建設現場への立ち入り禁止を求め、7人と環境保護団体「プロテクト・サッカー・パス」を相手取って訴訟を起こしました。訴訟では数百万ドルの損害賠償も求めています。

Peehee Muhuh / Thacker Pass USA
Peehee Muhuh / Thacker Pass

被告は、ピラミッドレイク・パイユート族の長老、そして精神的指導者として尊敬を集めるディーン・バーレーズ、フォート・マクダーミット・パイユート・ショショーネ族のドリース・サムビー・シー・ザーン・ナーツ(テ・モーク・ショショーネおよびワショー)、スタンディングロック・スーおよびクーザドゥカ・パイユート族のベサニー・サム、Community Rights USの創設ディレクター、ポール・シエンフエゴス、プロテクト・サッカー・パスのマックス・ウィルバートウィル・フォークです。彼らはこの地域がリノ・スパークス・インディアン・コロニー、サミットレイク・パイユート族、バーンズ・パイユート族によって神聖視されていることを理由に鉱山に抗議しています。この訴訟では、2023年4月25日の非暴力的な祈りと抗議、および2023年6月8日に警察によって襲撃されて解体されたサッカー・パスでの祈りのキャンプ設営が言及されています。訴訟で、リチウム・ネバダ社は、被告と被告らと協力して行動する「第三者」に対し、工事の妨害、アクセス道路の遮断、または当該エリアへの立ち入りを禁止する一時的禁止命令を認められました。リソースセンターはリチウム・アメリカズ社にコメントを求め、回答を得ました(同社の回答はこちら)。

国有企業および国営企業

人権を保護する国家の義務や、国有/国営企業の事業運営に対する規制強化にもかかわらず、国が所有または運営する企業も頻繁に人権を侵害しています。これについて、国連のビジネスと人権に関する指導原則(指導原則)は、「国家は、国家が所有または支配している企業、あるいは輸出信用機関及び公的投資保険または保証機関など、実質的な支援やサービスを国家機関から受けている企業による人権侵害に対して、必要な場合には人権デュー・ディリジェンスを求めることを含め、保護のための追加的処置をとるべきである」と明確に規定しています。2023年、最も多くの人権擁護者に対する攻撃に関与した企業は、インドの国有企業であるタミル・ナドゥ州産業振興公社(SIPCOT)でした。リソースセンターは、SIPCOTにコメントを求めましたが、回答は得られませんでした。

メキシコ横断回廊プロジェクトは、パナマ運河の代替ルートとしてメキシコ湾と太平洋沿岸をつなぐこと目指すメキシコ政府のイニシアティブです。このプロジェクトには、メキシコ湾と太平洋を結ぶ商工業回廊の開発、商業港の建設、一次および二次道路網、デジタル接続ネットワーク、ガスパイプライン、国営および民間企業が参加する10の工業団地などが含まれます。これらの開発は、この地域に住む12の先住民族コミュニティの生活を脅かし、彼らの領土や環境の保全にリスクをもたらすものです。地峡北部地域先住民共同体連合(Ucizoni)は、オアハカ州テワンテペク地峡で進行中の開発により影響を受けるコミュニティを支援する市民団体です。

Union of Indigenous Communities of the Northern Zone of the Isthmus (Ucizoni), Mexico

UCIZONI

2023年3月、モゴニェ・ビエホとヴィクシドゥ間の鉄道を24日間にわたって封鎖していたUcizoni抗議キャンプを警察が襲撃しました。この襲撃の後、Ucizoniのメンバー11人が刑事捜査を行うという通知を受け取り、4月28日、そのうちの6人、マリア・マグダレーナ・マルティネス・イサベルエスペランサ・マルティネス・イサベルエリザベス・マルティネス・イサベルエリオドロ・マルティネス・イサベルフェルナンド・エルナンデス・ゴメスアデラ・セベロ・テオドロが逮捕されました。同月、カルロス・ベアス代表が殺害予告を受けました。2023年8月、Ucizoniは、事務所とコーディネーターのカルロス・ベアスの自宅における「ハラスメントと威嚇行為」、およびフアナ・イネス・ラミレスの恣意的拘束を報告しました。

法律、自主的な取り組み、原則における進展

対処することを要求しています。最終文書(特に前文)には、人権擁護者に関する文言、「人権擁護者に関する宣言」が明示的に引用され、人権擁護者が企業活動によって権利や利益が影響を受ける可能性のある利害関係者として言及されています。これは、擁護者の保護と彼らとの協議が、人権と環境デューディリジェンスに欠かせないものだと示すものです。

2021年4月に発効したラテンアメリカとカリブ海諸国におけるエスカス協定も、近年採択された重要な拘束力のある制度です。この協定は、環境権擁護者に関する具体的な規定を含む世界初の法的拘束力のある文書であり、各国政府が環境権擁護者に安全で活動しやすい環境を提供し、環境権擁護者に対する攻撃の責任者が捜査・起訴されることを保証することを求めています。

2023年および2024年におけるその他の主な進展は以下の通り:

  • OECD 多国籍企業行動指針の改訂。改訂では、人権擁護者に対して報復を行わないこと、自社および取引先企業の業務における報復被害に対処すること、安全な空間の推進を支援することを企業に要求している。また、気候変動、動物福祉、生物多様性、森林破壊、公害、その他の環境問題に対する悪影響を特定し、対処することを企業に期待する等の規定が新たに盛り込まれた。
  • 国際人権サービス(International Service for Human Rights)が、人権擁護者の人権尊重に対する企業の責任の履行を監視するために必要なガイダンスを提供する指標を開発。この指標は、国連ビジネスと人権に関するワーキンググループが2021年に公開した人権擁護者の尊重確保に関するガイダンス、およびリソースセンターとISHRが2018年に発表したShared Space Under Pressure: Business Support for Civic Freedoms and Human Rights Defenders, Guidance for Companies (抑圧される市民社会スペース:市民の自由と人権擁護者に対する企業の支援、企業向けガイダンス)が基盤となっている。
  • 元国連人権擁護者特別報告者ミシェル・フォーストを史上初のオーフス条約に基づく環境擁護者に関する特別報告者に任命。オーフス条約はEUで健全な環境で生活する権利を保護する条約。環境擁護者を保護するメカニズムが法的拘束力のある枠組みの中で確立されるのは、国連システムまたはその他の政府間機構のいずれにおいても初めて。
  • 人権と環境に関する国連特別報告者デビッド・ボイドによる2024年3月の報告書の公表。企業が人権を尊重するための自主的な規範的枠組みの不十分さを評価し、クリーンで健康、かつ持続可能な環境に対する権利を企業による侵害から保護する国家の義務を明確に規定。
  • 気候変動に関する米州人権裁判所の勧告的意見が近日発表予定。この勧告的意見を通じて、同裁判所は気候危機に関連する有害な事業活動において人権を保護するための国家基準を策定する可能性がある(この勧告的意見に関するリソースセンターのパブリックコメントはこちら)。
  • 2024年4月開催の「先住民族と公正な移行に関する会議」に参加した87人の先住民族代表が起草した宣言。この宣言は、先住民族の人権、社会公平性、文化的完全性、包括性、完全かつ効果的な参加、繁栄の共有を支持するエネルギー移行のための基本原則を定めたもの。
  • 米国とEUによるオンライン・プラットフォーム向けの共同ガイダンスの公開。このガイダンスでは、オンラインでの人権擁護者を標的とした攻撃を防止、軽減、救済するためにプラットフォームが世界的に実行できる10の実践的な行動が示されている。
  • 2024年1月31日、米国議会のメンバーが、米国政府による人権擁護者に対する世界的な保護を強化するための法案を導入した。
  • 安全保障と人権に関する自主原則(VP)は「人権擁護者の権利の尊重に関するガイダンス2023」を発表。このガイダンスは、VPを実施する資源開発企業、農業関連企業、その他の企業に対し、人権擁護者に対する脅威や攻撃を一切認めない(ゼロ・トレランス)方針の策定、開示、実施、擁護者をVPのリスクアセスメントや人権デューディリジェンスに組み込むこと、擁護者と協議すること、などを推奨している。また、自主原則イニシアティブ(VPI)には擁護者を支援する責任があり、法の支配、説明責任のあるガバナンス、市民の自由を提唱することが、企業や市民社会の双方にとって重要であることを指摘している。
  • 2023年9月、ユニリーバが「人権擁護者を支援するための原則とその実施ガイダンス」を発表 - 人権擁護者を支援するための、これまでで最も詳細な企業方針のコミットメントであり、そのコミットメントを実施する方法についてのガイダンスを含む唯一のもの。

ユニリーバの方針と実施ガイドラインの公表、ならびにVPIガイダンスの公表は、企業が人権擁護者への攻撃を容認しないという新たな公約の重要な一歩ですが、ほとんどの企業は最低限の要件すら満たしていません。リソースセンターのポリシー・トラッカーは、企業人権ベンチマーク評価(CHRB)による評価に基づき、公開されている企業方針における人権擁護者支援に関するコミットメントを調査しています。その結果、評価対象企業のうち、人権擁護者に対する攻撃を容認、あるいは加担しないことを公約している企業は、260社中46社に過ぎないことがわかりました。さらに、攻撃を容認も加担もしないことを約束し、取引関係においても同様のことを期待し、人権擁護者の関与を積極的に組み込み、彼らが活動しやすい環境を整えるという、CHRBの3つの基準をすべて満たした企業はわずか9社でした。また、人権擁護者への攻撃を容認も加担もせず、取引関係にも同様のことを期待するという方針を表明している鉱山会社は、この業界で特に多くの攻撃が発生しているにもかかわらず、わずか5社にすぎません。CHRBの3つの指標をすべて満たしている鉱山会社はなく、鉱山業が例年最も多くの人権擁護者への攻撃に関与していることを考えると、これは特に懸念すべきことです。

政府、企業、投資家向け

企業活動に関連する人権侵害や環境破壊に声をあげている人々への攻撃がこれほど大規模に行われている現状は、政府が人権保護に失敗していることを示しており、企業や投資家による自主的な行動が、被害を防止、阻止、救済する上でいかに不十分であるかを物語っています。リソースセンターは以下に挙げる提言に直ちに取り組むことで、国家が人権擁護者の権利を保護する義務を果たし、事業主体が人権擁護者の権利を尊重することを求めます。

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政府への提言

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政府への提言

政府への提言:

  • 人権擁護の権利を認め、人権、持続可能な開発、健全な環境を推進する上で人権擁護者が果たす重要な役割を認識し、彼らへの攻撃を一切認めないゼロ・トレランスを公約する法律を成立させ、施行すること(より詳細な提言はこちら)。この法律には、先住民族とアフリカ系住民の固有の権利の法的承認を含めること(より詳細な提言はこちら)。
  • パリ協定を完全に実施し、人権擁護者の市民的自由を保護する主要な国際的・地域的基準に参加するか、あるいはすでに批准している場合はその基準を完全に実施すること。これには、平和的抗議行動や市民的不服従への対応における市民の自由に関する国際的義務を遵守すること、対テロ・対組織犯罪の対策を環境擁護者に適用することを中止することが含まれる。
  • 人権デューディリジェンスの義務化など、指導原則を実施するための国内法を制定し、法策定プロセスのあらゆる段階で人権擁護者と協議すること。この法律は、事業主体が人権擁護者、ならびに潜在的または直接的に影響を受けるその他の権利者と安全かつ効果的な協議を継続的に行うことを義務付け、気候変動の緩和と適応計画に組み込み、国連ワーキンググループの人権擁護者の尊重の確保に関するガイダンスおよび上記の主要基準との整合をはかること(より詳細な提言はこちら)。
  • 非致死的/致死的攻撃に関するデータを収集・報告し、より効果的な保護メカニズムにつなげるとともに、企業による擁護者の口封じを防止する反スラップ法を成立させること(より詳細な提言はこちら)。
  • 人権擁護者への報復に対する不処罰をなくし、企業の責任を追及するために司法制度を強化すること。また、攻撃の責任者の捜査と訴追に積極的に参加し、侵害が発生した場合の効果的な救済を確保すること。
  • ビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約の採択に向けた交渉に積極的かつ建設的に関与し、人権擁護者が直面するリスクと人権擁護の権利を明確に認めること。
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企業への提言

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企業への提言

企業への提言:

  • 擁護者の貴重な役割を認識し、擁護者に対する特定のリスクに言及し、デューディリジェンスプロセスのすべての段階において擁護者との効果的な関与と協議を確保し、事業、サプライチェーン、取引関係全体を通じて報復を一切容認しないゼロ・トレランスを公約する企業方針を採用し、実施すること。
  • 指導原則、国連ワーキンググループの人権擁護者の尊重確保に関するガイダンスおよびジェンダーガイダンスに従い、全体を通してジェンダーの視点を組み込んだ人権および環境デューディリジェンスに取り組み、その結果について報告し、事業活動によって被害を受けた人々の救済への効果的なアクセスを確保すること。
  • 先住民擁護者が過度にリスクにさらされていることを認識し、先住民族の自決権(土地、領土、資源)、および自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)の権利に根ざした先住民族の権利を尊重するための公約を作成し、実施すること。FPICには、同意を保留する権利と、FPICを達成するプロセスを定義する権利も含まれる。(より詳細な勧告はこちら)。
  • 自社が引き起こした、または加担した人権擁護者への悪影響を是正し、さらに自社の事業、製品、サービスに直接関連する悪影響を是正するためにサプライヤーと協力することを公約する。これには、人権擁護者や内部告発者の保護を含む、安全で効果的かつアクセス可能な、指導原則に沿った苦情処理・説明責任メカニズムを確立し、適切にリソースを提供すること、第三者からの苦情に対応すること、苦情に対処し救済するための強固なフォローアップを提供することが含まれる。
  • 人権擁護者には人権を擁護する権利があり、企業が指導原則の責任を遵守するうえで不可欠な協力者であることを公に認めること。
  • 市民の自由を制限したり、人権侵害や環境破壊に対する企業の法的責任を軽減したりするためのロビー活動、政治的な支出提供、その他の直接的または間接的な政治的介入を控えること。
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投資家への提言

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投資家への提言

投資家への提言:

  • 事業活動に関連するリスクを特定する上で人権擁護者が果たす貴重な役割を認識し、擁護者に対する攻撃を一切容認しないゼロ・トレランス・アプローチの採用を人権方針で公表すること。また、投資先企業に対して、この人権方針への以下のような期待を明確に伝えること:
    • 人権および環境関連のリスクを開示すること
    • コミュニティ、労働者、人権擁護者との協議を継続的に行うこと
    • 先住民族の権利(土地の権利、自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意を含む)を尊重する方針とプロセスを確立すること
    • 人権擁護者の権利を尊重すること
    • 被害が発生した場合の効果的な救済へのアクセスを確保すること
  • ジェンダーの視点を全体に取り入れた厳格な人権・環境デューディリジェンスを実施し、投資先候補企業については、過去に報復に関与していないかを調査すること。これには、権利保有者との協議や、先住民の自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意の権利が尊重されているかどうかを確認することが含まれる(企業の自己開示に頼らず、客観的な情報を活用して調査を行うこと)。
  • 人権や環境への被害や人権擁護者への報復の履歴がある企業への投資を避けること。
  • 人権擁護者への攻撃を含む、人権侵害や環境被害を引き起こしている、またはその一因となっている、あるいは直接的に関与している投資先企業に対し、その企業が悪影響を軽減し、影響を受けた人々に救済へのアクセスを提供するよう働きかけること。

著者:Christen Dobson、Hannah Matthews

調査者および寄稿者:Ana Zbona, Lady Nancy Zuluaga Jaramillo, Vitória Dell’Aringa Rocha, Ella Skybenko, Vladyslava Kaplina, Valentina Muñoz Bernal, and Claudia Ignacio Alvarez

リソースセンターは、人権擁護者に対する攻撃に関する情報を記録、共有している多くの擁護者、市民社会組織、ジャーナリストの重要な活動に支えられています。彼らなしでは、私たちの取り組みも成り立ちません。 この場を借りて心からの感謝を表します。

ビジネスと人権リソースセンター(Business & Human Rights Resource Centre)は、180カ国以上、10,000社以上の企業の人権への影響を追跡調査し、10カ国語のウェブサイトで情報を公開している国際NGOです。リソースセンターの「市民の自由と人権擁護者」プログラムは、企業活動やグローバル・サプライチェーンが関与する人権・環境擁護者に対する殺害や暴力の根本原因に取り組み、企業主体の権利尊重の実践と説明責任を提唱し、擁護者が安全に人権を擁護できるよう、擁護者や市民の自由を支援するための企業主体の迅速な行動と長期的な関与を強化するための取り組みです。