インドのサプライチェーンは、人権デューディリジェンスの動きに対応する準備ができているのか
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
企業の人権デューディリジェンス(HRDD)に向けた動きは、世界的に加速しています。新型コロナウイルス、気候危機、そして(グローバル・バリューチェーンに依存した)相互接続性と相互依存性が加速する世界経済の脆弱性という収束した影響に対処しようとする中で、地域によってカテゴリーが異なる脆弱なステークホルダーは、しばしば危機の最悪の影響の矢面に立たされます。
世界的に認知されている国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)の採択、およびそれに伴う企業のHRDDへのコミットメントは、ますます議題となっており、多くの国が(UNGPsに基づく)ビジネスと人権に関する国家行動計画やHRDD法および要件の義務化を発表しています。日本は、責任あるサプライチェーンにおける人権尊重に関するガイドラインの草案を発表し、増加傾向にあるDDの義務化に向けた措置を講じる国のリスト(英国とオーストラリアの現代奴隷法、オランダの児童労働DD法、フランスの注意義務法、インドの企業責任報告要件など)に参加した最新の国となりました。
人権を保護し尊重するための企業の行動は、自国にとどまらず、製品やサービスを製造、調達、販売するすべての地域に拡大することがますます重要になってきています。サプライチェーン全体での人権保護も、UNGPsの主要原則の一つです。インドで事業を展開する、あるいは製造やサプライチェーンを通じてインドとつながりのあるグローバル企業は、自国の法律とインドで適用される法律や規制の両方を遵守しなければなりません。インドには、人権の保護と尊重を目的とした現地の法律や規制がいくつかあります。人権侵害の被害を受けた人々には、中央および州レベルの救済メカニズムが用意されています。
インドの「責任ある企業行動に関する国家ガイドライン(NGRBC)」は、人権に関する企業行動など9つの原則に基づいています。このガイドラインは、人権ポリシーの採択と実施に始まり、従業員やサプライチェーン・パートナーの人権意識とトレーニング、苦情処理の窓口と救済メカニズムなど、企業にとって総合的なアプローチを助言しています。また、このガイドラインでは、事業所とサプライチェーンの両方における人権に関する懸念や事案の監視、およびHRDDに重点を置いています。NGRBCの9原則に基づき、インド国内上位1,000社の上場企業は、企業責任持続可能性報告(BRSR)フレームワークの一部として、持続可能性の開示を義務付けられています。
インドにサプライチェーンを持つ日本企業は、上場企業上位1,000社に含まれる場合、BRSRの要求事項を満たす必要が生じ得ます。また、義務化されていない場合でも、BRSRの枠組みやNGRBCを好事例として遵守することが推奨されます。日本の責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン案は、企業が人権を保護し尊重するために必要な措置を講じる一助となるでしょう。日本企業に対するインドのサプライヤーも、このガイドラインを参考に行動することができます。これらのガイドラインもUNGPsに基づいているため、日本の責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドラインとインドのNGRBCの間には以下のような共通点があります:
- どちらもガイドラインであり、自主的なものです。
- どちらも人権尊重のためにバリューチェーンアプローチを採用しており、企業が製造拠点にとどまらず、上流から下流までのサプライチェーンを検証し、人権尊重を確保するよう指導しています。
- 人権方針、HRDD、救済措置の仕組みについて企業に助言しています。
DDが浸透しつつあるとはいえ、企業が人権を尊重するにはまだまだ長い道のりがあります。人権方針を策定し始めた企業もありますが、次のステップに苦戦しています。インドのNGRBCは、企業が人権方針を越えて行動を起こすためのモデルとなっています。このガイドラインは、人権だけでなく、環境、倫理、透明性、経済、地域社会などに関する責任ある企業行動にまで範囲を広げており、幅広いアプローチをとっています。人権に特化した日本の責任あるサプライチェーンに関するガイドラインは、インドのサプライチェーンを含む企業が人権を尊重するための具体的な行動をとるための深い示唆を与えてくれています。
インドにおける日本のサプライチェーンは、NGRBCと日本のガイドライン案の両方を活用し、人権を尊重するシステムとプロセスの設計と展開のための措置を講じることができるでしょう。