ナイジェリア:国民議会が大手石油会社の撤退申請を環境・社会的責任履行まで停止するよう政府に要請
[Lawmakers Insist Shell, TotalEnergies Must Address Oil Spills Before Exit] 2025年2月6日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
[ナイジェリアでは近年、多国籍石油会社(IOC)の同国からの撤退が相次いでいるが 、こうした中、]ナイジェリア国民議会下院はシェルやトタルエナジーズなどの大手IOCの撤退申請を、企業が環境および社会的責任を果たすまで停止するよう連邦政府に要請した。これは、2月6日の本会議で、少数派指導者キングスレー・チンダ氏による緊急動議が採択されたことに続いた。チンダ氏は、国連環境計画(UNEP)やバイエルサ州石油・環境委員会(Bayelsa State Oil and Environment Commission)の報告を引用し、産油地帯であるナイジェリア南部ニジェール・デルタ地域で広範囲な環境汚染、生態系の破壊、社会不安の拡大が深刻であると指摘した。
[...] また、チンダ氏は、過去のIOC撤退の事例として、ネンベ油田のアイテオ社への売却、エクソンモービルの資産譲渡、イタリアのエネルギー大手ENIの子会社AGIPのオアンド社への売却を挙げ、これらのIOC撤退により地域社会が未解決の環境汚染や原油流出、社会不安に苦しめられてきたと述べた。特に、シェルやトタルエナジーズなどの大手IOCが環境責任を果たさないまま撤退を認められれば、ナイジェリア規制当局の権限が損なわれるばかりか、企業の責任が国家に転嫁されることになり、環境犯罪の免責という危険な前例を作ることになると警告した。
過去および現在進行中の負債に対処せずにシェルやトタルエナジーズの撤退申請を承認すれば、ナイジェリアの規制機関の独立性が損なわれ、企業の責任が国家に転嫁され、環境犯罪が免責されるという危険な前例を生むことになるキングスレー・チンダ氏
さらに、ナイジェリア下院はIOCが説明責任を果たさずに撤退すれば、ニジェール・デルタの環境破壊はさらに悪化し、ナイジェリアの規制枠組みは弱体化し、地域社会を保護する政府の能力に対する国民の信頼を損なうことになると警告した。この動議は満場一致で可決され、IOCがナイジェリアの石油資産から撤退する前に確実に環境・社会的責任を果たすべきだという下院の確固たる姿勢を示すものとなった。この決定が下された背景には、ナイジェリアが長年にわたり、原油流出やパイプラインの破壊行為(バンダリズム)による被害に苦しみ続けてきたことがある。また、これらの環境破壊が地域社会の経済にも深刻な影響を与えていることも大きな要因となっている。