All at sea:ツナ缶の太平洋サプライチェーンにおける現代奴隷制に取り組む企業の評価
マグロは世界で最も収益性の高い魚の一つであり、世界の多くの漁場が太平洋に存在します。 新型コロナウイルス(以下、COVID-19)に伴う世界中の消費者の買いだめ行動の結果、ツナ缶はもちろんのこと、マグロの売り上げも飛躍的に伸びました。その反面、この数十億ドル規模の業界において、漁師達はあらゆる分野で酷い虐待に直面しています。人身売買、借金による束縛、賃金の未払い、身体的および性的な虐待、極度の睡眠不足、医療放棄、さらには殺人など、世界中の水産業界は様々な虐待の申し立てで溢れています。漁師が何年にもわたって奴隷労働を強いられた例も報告されています。
私たちは二年前、世界最大のツナ缶メーカー80社以上を代表する、35のツナ缶ブランドとスーパーマーケットに対して調査を行いました。COVID-19が世界中の労働者に対して壊滅的な影響を与えたことを受けて、私たちは2020年から2021年にかけて、上記の企業がどのように人権に対するアプローチを変化させたかを理解することを目的として、これらの企業に再度アプローチしました。その結論、現代の奴隷状態に置かれている労働者にとって本当に重要なアクションに関しては、ほとんど進展が見られませんでした。
私たちはさらに、漁師やNGO、労働組合と共に現場での状況を把握し、それらの現状と企業からの報告の整合性を調査しました。その結果、企業の方針にいくらかの進展があったものの、本質的な改善対策は依然として遅れていることが分かりました。これは、各企業がCOVID-19パンデミックによって引き起こされる危害のリスクの高まりに対応できていないことを明らかにしています。
継続的に行われている虐待が水産業界に蔓延る現状に加えて、世界中にいる4,000万人の漁師の大多数にとって、状況は悪化する一方です。
主な調査結果
- 積極的にサプライチェーン全体をマッピングしている企業は、全体の5分の1未満
- 現代の奴隷制を対象とした人権デューデリジェンスプロセスは、依然ごく少数の企業でしか実行されていない(実行しているのは8社のみ、2018年から2019年の4社からわずかな増加)
- マグロのサプライチェーン特有の人権侵害を認識し、その詳細を提供した企業は1社のみ
- 人材採用プロセスの監督はごく限られた企業でしか行われておらず、採用プロセスの監督を実施していると報告した企業は全体のわずか6%
- 現状に対して段階的な改善計画があると答えた企業は、全体の9%未満
- COVID-19の結果として労働者に対する現代の奴隷制リスクが高まっている中で、状況を改善するために実際に行動を起こした企業はわずか4社に1社
推奨事項
各企業は以下を実施する必要があります。
- 現代の奴隷制のリスクに特化した、包括的な人権デューデリジェンスの実施
- サプライチェーンの精査と透明性の向上
- 自社のサプライチェーン内での採用活動に責任をもつこと
- 海上での積み替えや便宜置籍船への依存など、有害な慣行に従事する船舶からの調達の禁止
- 独立した監督プログラムのサポート
- COVID-19による規制の結果、見捨てられたり、立ち往生したりするリスクのある労働者の被害を最小限に抑え、支援するための対策の実施
政府は以下のことを行う必要があります。
- 企業に対する事業およびサプライチェーン全体を通した包括的な人権デューデリジェンスの義務付け