南アにおける移行鉱物の採掘への融資:銀行は十分な人権尊重の取り組みを行っているか?
南アフリカ共和国には、リチウム、亜鉛、マンガンなど世界有数の戦略的鉱物の重要な産地があり、これらの鉱物は、再生可能エネルギーへの世界的な移行の実現に不可欠です。また南アフリカ共和国は、世界最大のマンガンの産地で、最大の埋蔵量を誇る鉱床もありますが、この鉱物は風力・太陽光発電装置やバッテリーに必要な鉄鋼の製造に欠かせません。
ネットゼロ排出実現に向けた動きが加速する中、国内外の銀行から南アフリカ共和国の鉱業に資金が流れ始めています。しかし、よりクリーンなエネルギー源の利用が勢いを増す一方で、鉱物需要の高まりに伴う人権および環境への重大な懸念が見過ごされています。現地のコミュニティの権利、土地の権利、先住民族コミュニティの自由で事前の情報に基づく合意(FPIC)の権利が侵害されるリスクが特に高まっています。
今回の報告書では、南アフリカ共和国における移行鉱物の採掘事業への資金提供に関連のある15の銀行(国内銀行5行、国際銀行10行)の人権に関するコミットメントと取り組みについて調査しました。その結果、これらの銀行は、このとりわけリスクの高いセクターにおける権利侵害に加担しないための十分な措置を取っていない実態が明らかになりました。
移行鉱物の採掘事業への資金提供を行う銀行には、エネルギー移行を迅速に行うだけでなく、公正に行うという極めて重要な役割があります。本報告書では、銀行に対する提言を示し、新たなクライアントになる可能性がある企業の人権および環境への取り組みについてデューディリジェンスを実施し、事業への資金提供に条件を設けることで、銀行が持つ影響力を行使して各種権利が尊重されるエネルギー移行の実現につなげるよう求めます。