Drying up:東欧・中央アジアで投資する水力発電プロジェクトが抱える問題に対する投資家の見解
2022年7月、ビジネスと人権リソースセンターは、報告書「Drying up」を公開しました。これは、コーカサス地方および中央アジアにおける水力発電がもたらす環境と人権の被害を追跡する報告書であり、リソースセンターは、アルメニア、グルジア、タジキスタン、キルギスの水力発電所に関連した環境と人権侵害の公的な申し立ての追跡調査を行いました。報告書のデータから、水力発電の需要が増加する中で、地域社会が大きなリスクに直面していることが判明しました。また、地域社会の生活に影響を及ぼす事例の多くは、水へのアクセスという別の問題も抱えています。再生可能エネルギーへの公正な移行が気候変動の悪影響を緩和するのであれば、この分野における被害に早急に対処する必要があります。
投資家への呼びかけ
報告書の公開後、ビジネスと人権リソースセンターは、報告書に含まれる水力発電プロジェクトに関与する投資家に接触を図り、環境と人権に関する申し立てと、申し立てられた被害を是正するための措置についてのコメントを求めました。
投資家に求めたコメントには、プロジェクトのリスク評価における投資家の取り組み、モニタリング、様々な利害関係者との協議、人権リスクの軽減といった問題を取り上げた質問が含まれており、詳細はこちらからご覧いただけます。投資家のうち全ての質問に回答したのは欧州投資銀行(EIB)一社のみでした。さらにEIBは、タジキスタンのログン水力発電所プロジェクトに対して同社が査定を行う可能性に関して、資金の支出および正式決定が行われていないことを認めました。このニュースは、当報告書が公開された時点でメディアでも報道されていました。
その他の投資家から寄せられた回答は、すべて一般的なものでした。欧州復興開発銀行(EBRD)がタジキスタンのログン水力発電所に関心を示しているというニュースに対して、EBRDは否定的な見解を示しました。一方で、ジョージアのネンスクラ水力発電プロジェクトに関しては準備段階にあり、EBRDの要求を満たすために環境・社会影響に関する懸念事項を十分に検討していると述べました。アジア開発銀行及びアジアインフラ投資銀行は、ネンスクラ水力発電プロジェクトに対する融資について最終的な決定を下していないことを明らかにしました。国際金融公社(IFC)とドイツ復興金融公庫(KfW)は、報告書で指摘された懸念事項のうち、一部については認知していることを認めました。KfWはその対策として、アルメニアの小水力発電所に関連する環境被害のリスクを最小限に抑えるために追加措置を決定したと述べました。IFCは、パフォーマンス・スタンダードの遵守のために取引先と協力してきたと説明しました。
リソースセンターから呼びかけに対して、ユーラシア開発銀行と韓国開発銀行(KDB)からの回答はありませんでした。