アムネスティの新報告書、日本企業を含む大手EV企業の国際人権基準への対応が不十分であることを明らかに
[Recharge for Rights: Ranking the Human Rights Due Diligence Reporting of Leading Electric Vehicle Makers] 2024年10月15日
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
アムネスティ・インターナショナルによる報告書「Recharge for Rights:大手電気自動車メーカーの人権デューディリジェンス報告ランキング」は、日本企業(日産・三菱自動車)を含む、主要な電気自動車(EV)メーカー13社の人権デューディリジェンスの実践を評価したものである。特に、コバルト、リチウム、ニッケル、銅といったEVバッテリーに不可欠な鉱物の調達において、これらの企業がサプライチェーンに関連する人権リスクにどのように取り組んでいるかを評価することを目的としている。
主な調査結果
- 人権に関する方針とコミットメント:報告書では、多くの企業が人権に関する方針を定めているものの、その実施には大きな隔たりがあることを指摘している。ほとんどの企業は人権へのコミットメントを掲げているものの、とりわけ鉱業の影響を受ける地域社会を含むステークホルダーとのエンゲージメントのための包括的なメカニズムが欠如している。
- リスクの特定と評価:評価によると、企業がサプライチェーンにおける人権リスクを適切に特定・評価できていない場合が多い。その多くは、サプライチェーンに関与する製錬業者や鉱山、またはこれらの事業体が実施するデューディリジェンス・プロセスに関して十分な情報を開示していない。この透明性の欠如が、人権への影響の全容を理解する妨げとなっている。
- 情報開示:報告書は、人権デューディリジェンスに関する開示の質を批判している。リスク特定プロセスに関する情報を提供している企業も存在する一方で、こうした取り組みの結果に関する詳細の報告が不足していることが多い。例えば、フォルクスワーゲンのバッテリー材料に関する情報開示は、彼らの是正措置の有効性を適切に反映していない。
- 救済と苦情処理メカニズム: 報告書によると、企業は負の影響を解決するというコミットメントを表明している一方で、その救済措置の説明が曖昧であることが多い。また、影響を受けた当事者を企業がどのように救済プロセスに関与させるかについての詳細も不足しており、多くの企業では業務レベルの強固な苦情処理メカニズムが欠如している。
提言
- ステークホルダー・エンゲージメントの強化: 企業は、影響を受けるコミュニティ、特に先住民族を含めた包括的なステークホルダー・エンゲージメント戦略を策定・実施し、意思決定プロセスにおいて彼らの声を確実に反映させるべきである。
- 透明性の向上:製造業者は、鉱物の原産地、サプライヤーのデューディリジェンス・プロセス、人権評価の結果に関する詳細な情報を開示し、自社のサプライチェーンに関する透明性を高める必要がある。
- ジェンダーに対応したデューディリジェンスの強化: 企業は、その事業が女性や社会的に排除された集団に与える事業特有の影響を認識し、人権デューディリジェンスにおいてジェンダーに対応したアプローチを採用することが推奨される。
- 効果的な救済プロセスの確立: 企業は、影響を受けるコミュニティを含めた明確で利用可能な救済プロセスを確立し、人権侵害に対処するための行動の有効性に関する詳細な情報を提供すべきである。
- 定期的な報告と説明責任: 企業は、説明責任と継続的な改善を促進するために、人権デューディリジェンスの取り組みに関して、直面した課題や進捗状況を含めた公開報告を定期的に実施することを約束すべきである。
本報告書は、EVメーカーが電気自動車への移行が脆弱なコミュニティと彼らの権利を犠牲にしないことを保障し、その事業とサプライチェーンにおいて人権を最優先することが緊急課題であると強調している。
評価対象となった企業の回答は、こちらの報告書付属文書2から閲覧可能である。