新報告書―紛争鉱物に関する米国証券取引委員会の開示規則はコンゴ民主共和国の平和と安全を改善できていないと報告
[Peace and Security in Democratic Republic of the Congo Have Not Improved with SEC Disclosure Rule ] 2024年10月
[非公式英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
米証券取引委員会(SEC)の紛争鉱物の情報開示規則は、紛争鉱物(紛争地域で採掘され、武装勢力の資金源となっている鉱産資源、主に金、タンタル、スズ、タングステン)の流通経路を追跡し、その出所に関する情報開示を企業に義務付けている。この規則は、武装勢力が紛争鉱物の採掘および取引で得る収益を削減し、コンゴ民主共和国および周辺国の平和と安全を促進することを意図して定められた。
紛争には多くの要因が関わっているが、この規則によって、鉱物が武装集団の資金源となり、暴力を助長するリスクについて国際的な認識が高まったと関係者や専門家は述べている。しかし、紛争鉱物、特に金に関しては、密輸などの障害があり、鉱物の出所を追跡する努力は功を奏していない。
2023年、紛争鉱物の情報開示を行った企業の数は、2014年以来初めて増加したが、多くの企業は依然として鉱物の原産地を特定できないと報告している。SECの規則では、紛争鉱物を使用する企業は自社製品に含まれる紛争鉱物の出所について「合理的な原産国調査」(reasonable country-of-origin inquiries)を行う必要がある。さらに、状況に応じて、企業は紛争鉱物の出所と流通経路を特定するためのデューディリジェンスを実施しなければならない。2023年には、調査を実施した企業の約63%が、紛争鉱物の出所について予備的な判断を下した。その後、デューディリジェンスを実施した企業の約62%が、鉱物の出所を特定できなかったと報告している。[...]
2024年10月、米国会計検査院(GAO)は報告書のなかで、SECの紛争鉱物開示規則はコンゴ東部における暴力的な事件の発生や件数の削減につながっておらず、むしろ金採掘地(特に小規模手工業的採掘地)のある地域で暴力の拡大に関連していたと発表した。さらに、この規則はコンゴに隣接する国々には影響を与えていない可能性が高いとも述べた。
コンゴの武装集団は紛争鉱物以外のさまざまな資金源からその暴力的活動の資金を調達しており、近隣諸国の影響や統治の脆弱性など、相互に依存する多くの要因が東部の紛争を助長していると専門家は指摘している。専門家や非政府組織(NGO)の報告によると、SEC規則は紛争鉱物の原産地に関するデューディリジェンスと透明性を向上させるよう企業に促すことを意図していたものの、紛争鉱物の追跡は密輸やコスト面での障害により難しく、正確な出所の特定は依然として困難である。[…]
GAOは、2004年7月から2022年12月までのACLED(武力紛争位置・事象データプロジェクト)のデータ、ASMの採掘場所に関するデータ、鉱物価格、その他のデータを用いた統計分析を行なったが、SECの開示規則がコンゴ東部の暴力を減少させたという証拠は見つからなかった。[...]
一方、ACLEDやその他のデータを用いた分析から、SEC規則がコンゴ民主共和国東部、特に金鉱山地域における暴力の拡大と関連していることも明らかになった。暴力事件は特に小規模金採掘現場周辺で顕著であった。GAOは金は他の3つの鉱物よりも持ち運びやすく、追跡が難しいため、武装勢力による金鉱山の支配権をめぐる争いが激化した可能性があると付け加えた。タンタル、スズ、タングステンの小規模採掘地では同様の影響は見られなかった。
SECの開示規則は、企業の透明性向上を促進してきたが、鉱物の原産地を正確に追跡するには依然として多くの課題が残されている。[...]