国連指導原則を通じた紛争地域における企業の人権尊重の取り組みの促進
[英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター ]
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ミャンマー軍事政権への企業からの資金提供であろうと、中国の新疆ウイグル自治区で人権侵害に加担している取引先との事業が明らかになった太陽光発電産業であろうと、リビアやエジプトの抑圧的政権に監視技術を販売したとしてフランスの裁判所で訴えを起こされているテクノロジー企業であろうと、世界の企業は、紛争国における人権問題の顕在化が徐々に財務的な影響として表れている現実に気付きつつある。
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10年前に採択された国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)は、紛争地域および高リスク地域(CAHRA)での事業に関連する重大な権利侵害はリスクが高いとして、このようなリスクを特定、防止、軽減するため包括的な人権デューデリジェンス(HRDD)を実施し、法令遵守の問題として対応するよう企業に求めている。
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ESG(環境・社会・ガバナンス)投資がますます活発化する中、UNGPに基づいて投資を行う投資家が増えている[...]これまで以上に社会的側面に注目しながら、人権の重大リスクとCAHRAで事業を行う企業にとっての重要リスクの関連性を認識した上で投資家も判断を下すようになってきている。
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しかし今のところ、自らの投資が人権侵害を引き起こしたり、助長したり、そうした侵害に関与したりする結果になっていないかを確かめるとともに、紛争の被害を受ける脆弱な人々を守るための様々な法律や規制、自主的な取り組みにつなげるための実用的な指針は限られている。UNGPはこうしたギャップを解消し、投資家に向けて詳細な指針を示すための包括的な枠組みを提示している。UNGPによる紛争地域での包括的人権デューディリジェンス実施の要請に注目し、Heartland Initiativeは、CAHRAにおける権利尊重投資手法を策定した。脆弱な人々の権利を守ろうとする投資家を支援すると同時に、企業が直面する重要課題に対処することを目指すHeartlandの手法は、侵害が起きている場所、違反者、被害者との地理上の位置、関係性、事業上のつながりに基づいて、自社が抱えるリスクの深刻度を企業が特定し評価できるものとなっている。
このアプローチでは、単一の問題や地域、議論に焦点を当てず、企業の事業状況、バリューチェーンパートナー、事業活動の相関的リスク変数を考慮したプロセスが優先される。結果的に、当該企業の人権およびその他の重要リスクの全体像をより包括的に把握できるため、世界全体での収益や事業のより多くを占める部分を網羅し、リスクにさらされている権利者や国々をより幅広く捉えて対処することができる。
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