2021年版 再生可能エネルギーと人権ベンチマーク
気候変動は、地球とその住民が何世紀にもわたって直面してきた最も重要で複雑な問題の一つです。現在2年目に突入した新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、公平で持続可能な世界経済システムを構築することの緊急性と必要性がより一層高まっています。
クリーンエネルギーへの移行を急速に進めることは、経済の本質的な変革にとって不可欠な要素です。クリーンエネルギーへの移行は、地球生態系の破壊を回避し、繁栄とディーセントワークの実現をもたらすものですが、決して保証されたものではありません。
ベンチマーク初版では、再生可能エネルギー業界の大手企業15社を対象に、他の主要ビジネスセクターの評価に用いられている人権基準に基づいた評価指標を使い、人権に関する方針とプラクティスを評価しました。その結果、多くの企業が事業活動やサプライチェーンにおいて人権を尊重するために基本的な方針を実行しておらず、業界全体における人権基準の受け入れが著しく不十分であることがわかりました。
今回のベンチマーク第2版では、初回の評価から1年以上が経過した時点で、業界内で基本的な人権に関する方針や慣行の採用に向けて、僅かながらも進展が見られました。いくつかの企業はスコアを大幅に向上させ、ほぼすべてのベンチマーク対象企業が昨年と比較して何らかの改善を示しました。
しかしながら、全体の平均スコアは僅か28%という深刻な結果となりました。加えて、人権リスクが最も顕著なベンチマーク指標である、土地の権利、先住民の権利、人権擁護者の保護などの項目で、企業のスコアは最も低くなっています。
本当の意味での迅速な進展がなければ、再生可能エネルギー・プロジェクトを受け入れる地域社会は、しばしば悲劇的な結果をもたらす人権リスクに直面し続けることになるでしょう。再生可能エネルギー企業は、風評被害、事業運営、法的リスクに直面し、投資家もこれらのリスクにさらされることになります。また、各国政府は、気候変動問題への取り組みを進める一方で、国民の人権を守ることに苦労するでしょう。
他の分野と同様、再生可能エネルギーの分野においても深刻な人権侵害の申し立てが幅広く寄せられ、それらをどのように解決するかに苦慮しています。ビジネスと人権リソースセンターは、過去10年間に再生可能エネルギープロジェクトに関連した200件以上の申し立てを記録しています。そのうちのほぼ半分(44%)は、風力・太陽光発電分野での申し立てです。その中には、土地や水の強奪、先住民族の権利の侵害、ディーセントワークや生活賃金に対する労働者の権利の否認などの侵害が含まれています。
クリーンエネルギーへの移行を成功させるためには、迅速かつ公正に行う必要があります。再生可能エネルギー企業は、自社の事業に関連する人権への影響を防止、緩和、救済するために、事業とサプライチェーンに関する強固な人権デューディリジェンス(HRDD)を企業活動に組み込む必要があります。そして当ベンチマークは、企業がこの目標を達成するための助けとなるでしょう。
2021年版 主な調査結果レポート(英)
風力・太陽光発電分野に関する調査結果
レポート日本語概要版
風力・太陽光発電分野に関する調査結果の日本語概要版
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調査方法
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2020年度ベンチマーク
第1回「再生可能エネルギーと人権ベンチマーク」での企業の評価をご覧ください。
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低炭素経済への移行を後押しする鉱物資源の好況が人権に及ぼす影響の追跡調査