2023年KnowTheChain食品・飲料セクターベンチマーク
日本企業:人権デューディリジェンスの実施にギャップ
フードシステムは世界経済の要であり、全雇用の3分の2を占めています。グローバルな食料サプライチェーンで、商品の収穫、採取、捕獲、加工、包装に携わる人々は、私たちの生活に必要不可欠なエッセンシャルワーカーとして重要な役割を果たしているのです。しかしその結果、彼らは、気候危機、紛争、経済不安と高騰するインフレ、社会不安の矢面に立たされています。さらに、食料サプライチェーンの労働者に対する強制労働リスクは高く、世界的な強制労働のセクター別ランキングで農業は第4位です。
しかし、彼らの果たす役割の重要性にもかかわらず、企業の労働者保護の取り組みは十分とは言えません。労働者に対するリスクがますます高まり、企業の人権デューディリジェンスに対する規制が強化されるなか、強制労働リスクに対処するために業界全体でビジネスモデルの変革が求められています。このような背景の下、KnowTheChainは2023年食品・飲料セクターのベンチマーク評価を実施しました。評価の結果、食品・飲料セクターのグローバル大手60社の平均スコアは100点中16点であり、サプライチェーンの労働者を強制労働リスクから保護するために必要なデューディリジェンスがいまだ不十分であることが明らかになりました。評価の対象企業には、イオン、味の素、キッコーマン、明治、セブン&アイ、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)、ヤクルト本社の日本企業7社が含まれています。日本企業7社のサプライチェーンにおける強制労働リスクへの取り組みの平均スコアは、世界全体のスコアを下回り、100点中12点でした。
KnowTheChainの2023年食品・飲料ベンチマーク評価の主な結果は以下の通りです。
- 食品・飲料セクターのサプライチェーンで移住労働者が人権侵害にさらされている実態は広く知られています。しかし、多くの企業は労働者負担の募集・斡旋手数料など、搾取的な採用活動に関連するリスクに対処するための基本的な方針とプロセスを開示できておらず、採用活動に関する平均スコアは100点中13点にとどまりました。採用活動に関して、日本企業の平均スコアはさらに低く(100点中6点)、評価対象となった日本企業の71%が、サプライチェーンにおける労働者負担の斡旋料を禁止する方針を開示していませんでした。
- 採用活動だけでなく、労働者の声と救済措置に関しても評価は非常に低く、それぞれ100点中9点と100点中6点となりました。これは、企業が労働者の人権侵害を救済できておらず、サプライチェーンで働く労働者の声やニーズを考慮していないことの表れです。日本企業のみで見ると、労働者の声に関する評価は100点中4点、救済措置に関する評価は100点中0点でした。
- 2020年と2023年の両方でKnowTheChainがベンチマーク評価した日本企業は3社で、いずれも2020年以降、ある程度の進展がみられました。なかでもサントリーは全評価企業の中で最も大幅な改善を示し、スコアを100点中8点から100点中32点に伸ばしました。
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結論
ベンチマーク評価の結果、日本企業には、移住労働者の保護をはじめとして、人権デューディリジェンスの実施に重大なギャップがあることが示されました。日本では、政府によるガイドラインが発表されるなど、人権デューディリジェンスに関する規制が整備されつつあり、各社の人権への取り組みに向けられた期待は高まっています。この期待に応えるために、日本企業はサプライチェーンにおける強制労働リスクに対処する人権デューディリジェンスの基本手順を確立するとともに、既存の優良事例を学び、それを基盤に取り組みを改善する必要があります。
企業に対する提言
- トレーサビリティとサプライチェーンの透明性:一次サプライヤー企業の社名と所在地を明記したリストと、サプライチェーンの労働者に占める 女性や移住労働者の割合などサプライチェーン におけるリスク要因に関するデータを開示する。高リスク商品の原材料調達国を追跡し、開示する。
- リスクアセスメント:サプライチェーンの各拠点および階層における強制労働リスク評価を含む、詳細なサプライチェーン・リスクアセスメントを実施し、開示する。これらの評価は、労働者やその代表者、およびサプライヤーの拠点がある地域の専門家などのステークホルダーの意見を取り入れたものでなければならない。サプライチェーンの各層で特定されたリスクを開示することは、効果的なデューディリジェンスを裏付ける信頼となる。
- 調達行動:労働者の賃金を支援する措置に加え、計画や見通しを含めた責任ある調達行動を採用し、開示する。
- 責任ある採用:労働者ではなく雇用者が斡旋料を負担するという雇用者負担原則をサプライチェーンの方針や契約に盛り込む。サプライチェーン全体で、労働者が支払った斡旋料を効果的かつ一定期間内に、透明性のある方法で救済する措置を講じる。
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