バッファリングの権利:欧州の新たなデューディリジェンス規制は、いかにしてテクノロジーの権利に関するリスクを低減しうるか
現在の技術革命は、人類の発展に貢献する大いなる可能性を秘めています。しかし、テクノロジーの負の側面が急速に拡大しており、ヘイトスピーチやフェイクニュース、侵害的な監視、強圧的なアルゴリズム、差別的な人工知能や汚染を巡る人権に関する懸念が高まっています。十分な事業規制がない今、無責任なテクノロジー企業による不可解かつ侵略的な慣行が罰せられることなくまかり通っています。現在の侵害の規模や範囲を見ると、テクノロジー大手企業に対する社会の信頼が永久に蝕まれかねず、そうした企業の事業に対する社会の認可も永久に危ぶまれることになります。
欧州の企業持続可能性デューディリジェンス指令案は歓迎すべき動きであり、自社の世界的な事業活動やサプライチェーンにおける人権リスクや人権被害に対処するため人権・環境デューディリジェンス(HREDD)の実施を企業に義務付けることで、欧州のビジネスモデルの転換を図るものです。同指令には、侵害を終わらせるとともに、繁栄の共有と実質的な民主主義に寄与するようテクノロジー業界を生まれ変わらせる大きな可能性があります。一方で、その可能性を発揮して、各種権利を尊重するテクノロジー業界を実現するためには、指令のさらなる強化が必要です。ありがたいことに、この課題はそれほど難解なものではありません。同指令は「国連ビジネスと人権指導原則(UNGP)」に基づいて作成されており、この原則に完全に合致させることで、同指令の主な弱点に対処できるからです。
本報告書では、市民社会、国会議員、責任ある企業や投資家が特定した、同指令で強化するべき主な領域について検討します:
- 企業・業界の範囲
- 権利の範囲
- バリューチェーンと取引関係
- ステークホルダー・エンゲージメント
- 苦情処理の手続き
- 法的責任
欧州に有効なデューディリジェンス法があれば、あまりにも頻繁に耳にするテクノロジー業界による人権侵害への対応を、現在の「我々に把握できたはずがない」から、「どのように把握(し行動)するか?」という積極的なものに変える後押しができるでしょう。この変化は、あと少しで実現できるところにあるのです。