ベリー産業の苦悩：メキシコのサプライチェーンにおける労働者の権利
Claudia Ignacio Alvarez, BHRRC
Claudia Ignacio Alvarez, BHRRC
数百万ドル規模のベリー産業の最前線にいるメキシコの農業労働者は、多国籍企業の儲けのために過酷な重労働を引き受けており、惨めな生活環境に耐え、常に雇用不安にさらされています。こうした状況は、異議申し立てを行うための実効性のある労働者代表制がないことと相まって、労働者の権利のより効果的な規制が切に求められる搾取の温床となっています。
農業労働者は、メキシコ北部から中部にかけて広がるベリーの産地での働き口を求めて、オアハカ州、ゲレーロ州、チアパス州、ミチョアカン州などさまざまな州をまたいで移動し、同国の主要輸出農作物であるベリー類の生産を担っています。そうした労働者の手で栽培、収穫、輸送されたベリー類は米国やその他37カ国の食卓に並び、ベリー産業は農業の中でもかなり実入りのいい産業となっています。同産業は、インフォーマルな労働に依存し、潤沢な資金のある一握りの大手企業が牛耳っているにもかかわらず、私たちの調査では、各企業は現在のところ、ベリー産業で働く労働者の権利を十分に尊重していない実態が明らかになりました。
サプライチェーンでは、透明性と人権デューディリジェンス（HRDD）の深刻な欠如が目立ちますが、企業の方針でこの2点について定める動きは進んでいるものの、いまだに実践されていません。私たちが調査した60社のうち、場所や問い合わせ先の詳細といった基本情報をウェブサイトで公開している企業はわずか24社で、人権デューディリジェンスに関する問い合わせに応じた企業はそのうちのたった2社でした。
調査の一環で行ったインタビューでは、労働者は、不規則な契約条件によって過酷な肉体労働を強いられる中で危険な労働環境に置かれている一方、雇用不安にさらされていることが分かりました。ミチョアカン州でベリーの収穫作業に携わるエンリケさんは次のように話してくれました：
…1～2ヶ月の契約で雇われることもあれば、5ヶ月ということもあります。時間外労働をするよう言われることもありますが、契約にはありません…季節をまたいで同じ農園で働いたとしても、この仕事に昇進はありません。その都度、新たに契約を交わすことになります。
本報告書は、農業サプライチェーンにおける労働者の権利を確実に尊重するよう、各企業とメキシコ政府は直ちに行動を起こさなければならないことを伝えています。
主な提言：
- 企業は、自社のサプライチェーン全体、とりわけ中小企業に細心の注意を払って、権利侵害の特定、防止、軽減、是正のための人権デューディリジェンスを行い、労働者に対して責任ある採用、透明性のある契約慣行、結社の自由、健康管理に関する十分な対策を保証するべきです。
- メキシコ政府は、人権デューディリジェンスの義務化を通じて移動労働に就く農業労働者の権利の保護につながる規制環境を整備し、その中で労働者をはじめとするステークホルダーとの意義あるエンゲージメントを優先的に実施するべきです。
- メキシコ政府は、ベリー類輸出企業における正式採用を実現させることで、移動労働に就く農業労働者とその代表者による米国・メキシコ・カナダ協定（USMCA）の「Rapid Response Mechanism」へのアクセスを保証するべきです。