11月20日、FIFAワールドカップ2022がドーハで開幕します。ワールドカップの開催が決まってから10年以上、湾岸諸国のリサーチャーと市民社会は、企業活動において最も不透明な状況の1つである移住労働者の労働環境に光を当てようとしてきました。

ワールドカップ開催に先立ち、私たちはカタールの民間企業に雇用される何百万人もの移住労働者の労働権侵害がどのようなものであるかを分析しました。そのデータによれば、カタール全土の移住労働者は、その労働環境の改善や搾取的なカファラ制度の廃止を求めたにもかかわらず、使用者や人材紹介業者による搾取に苦しみ続けています。何十万人もの移住労働者がワールドカップの実現のために働いていますが、その経験が聞き入れられることはあまりに少ないのが現状です。

ワールドカップ開催にあたり、カタールは1つのスタジアムを改修し、さらに7つのスタジアムを建設しました。スタジアムはこの大会の視覚的な中心であり、それぞれが建築デザインとエンジニアリングの傑作であり、建設ブームで利益を得ようとする地元企業や多国籍企業が競って入札に参加しました。

特に建設会社や警備会社で働く移住労働者は、スタジアムや周辺地域の建設や警備の際に、劣悪な労働条件、安全衛生違反、雇用条件違反があったことを報告しています。カタール全土の他の労働者とは異なり、ワールドカップ会場の労働者は、「伝送と遺産の最高委員会」が定めた「労働者福祉基準」により、より良い水準の労働条件を経験しているはずでした。キックオフまで1カ月を切った時点で、アムネスティ・インターナショナルの最新のリアリティ・チェック報告書は、同基準の「執行の程度をめぐっていくつかの大きな未解決の問題が残っている」ことを明らかにしました。

私たちは、2014年7月から2022年11月までの間に、ワールドカップ・プロジェクトの現場やスタジアムに関連する移住労働者の人権侵害が疑われる合計60件の事例を追跡調査してきました。しかし、労働者が自らの経験を話すことを妨げるような報道への制約を考えると、これらの数字は氷山の一角にすぎないのです。