東南アジアにおけるビジネスと人権擁護者
東南アジアには世界の全生物種の20%近くが生息しており、気候危機に対処するためにはこの地域の生物多様性と天然資源を保護することが不可欠です。環境を保護し、権利を尊重する社会を推進し、グリーン経済への公正な移行を実現する上で、東南アジアの人権擁護者(HRD)は重要な役割を担っています。責任ある企業行動を呼びかけ、企業の事業やサプライチェーンにおけるリスク及び損害に人々の関心を集めるHRDの活動は、東南アジア地域内及びグローバルで、より持続可能な未来を支えるために極めて重要です。
このような重大な活動を行っているにもかかわらず、地域全体の労働、土地、環境の権利を擁護する人々は、しばしば国家、非国家組織の両者から強い反発を受けるだけではなく、脅迫、司法ハラスメント、殺害、誹謗中傷活動などの深刻な暴力や弾圧に直面しています。
ビジネスに関連する人権侵害について懸念を表明するHRDに対する攻撃は、2015年から2021年の間に4,200件以上記録されました。この7年間、一貫してアジア太平洋と中南米がビジネスに焦点を当てたHRDにとって最も危険な2つの地域であり、世界全体の攻撃の4分の1近く(22%、916件)が東南アジアで発生しています。2021年に報告されたアジア太平洋地域の人権擁護者にとって最も危険な国4つのうち3つが、フィリピン、カンボジア、インドネシアの東南アジア地域に位置しています。
主な調査結果
- 2015年1月から2022年10月までの間に、東南アジアで916件の攻撃が記録されました。
- 攻撃が記録されたのはフィリピンが最多(303件)で、次いでカンボジア(200件)、インドネシア(132件)となっています。
- 東南アジアのHRDに対する攻撃は、ほぼすべての分野に及びます。最も危険な3分野はすべて天然資源関連で、鉱業(230件)、農業事業(207件)、林業と木工業(89件)です。
- 2021年の東南アジアにおける攻撃の70%は、気候、土地、環境のHRDに対するものでした。27%は労働者の権利に関する活動家および労働組合員に対するものでした。
- 東南アジアにおける攻撃の10件中3件は女性のHRDに対するものでした。
- 5件中3件の攻撃は司法ハラスメント(恣意的な拘束、犯罪化、市民参加に対する戦略的訴訟:スラップ訴訟)で、この種類の攻撃は東南アジアのHRDに対する攻撃の中で最も多く記録されています。
さらに調べる:HRDに対する攻撃のデータベース
リソースセンターは、企業やその活動に対して声を上げた故にターゲットにされたHRDに対する攻撃のデータを収集しています。データの収集は、暴力のパターンの分析、危険な企業セクターや地域の特定、ターゲットになった個人と集団を支援する上で重要となります。