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記事

2021年5月17日

著者:
Frank Bold, Alliance for Corporate Transparency

解説:気候変動移行計画で企業を支援するため、EU報告基準の課題を探る

[Climate transition plans: How EU standards can help companies to focus on the right data] 2021年5月13日

[英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター ]

企業が成功し、生き残っていくためには、ネットゼロの未来を見据えたビジネスモデルの調整が不可欠になりつつある。その実現のために、企業は事業戦略の中核をなす領域で取り組む包括的な気候変動移行計画を策定する必要がある。

EUサステナブルファイナンス戦略(EU Sustainable Finance Strategy)」は、持続可能な事業活動への民間投資を年間5000億ユーロ上乗せすることを目指している。この機会を有効活用するため、企業は正しいデータに注目し、情報開示をする必要がある。企業のそうした取り組みを支援するため、EUは非財務情報開示に関する従来の法律に代えて「企業のサステナビリティ報告に関する指令(Corporate Sustainability Reporting Directive、CSRD)」を新たに定めようとしている。同指令は、情報開示に関する各種基準に沿った内容となる。そうした基準に基づいて、企業はネットゼロ経済に向けた移行の取り組みを報告する方法やシナリオ分析の方法、リスクや機会、実績やインパクトを評価するための主要測定指標を明確に把握することができる。

今回の記事は、次の2つの疑問に答えている:

  1. 気候変動移行計画に関連して、企業が検討するべき重要な情報とは?
  2. 企業を支援するためにEUの気候変動関連情報開示基準で対応する必要がある重要課題とは?[...]

気候変動移行計画は、言い換えれば、ネットゼロ経済への移行において企業として貢献し成長するための戦略である[...]

気候変動移行計画を策定するには、企業は次の2点について評価する必要がある。

まず同計画は、主なインパクトやリスクの原因、機会がどこにあるかを特定するバリューチェーン全体を対象とした分析に基づいたものでなければならない。資本提供者や規制によってそうした動きへの期待が高まっているだけでなく、ビジネスモデルのレジリエンスを把握し、焦点を正しく合わせるためにもそうした取り組みは重要である。

次に、企業は気候関連のリスクと機会の分析を実施しなければならない。それにより、移行への投資を検討し、正当性を確認するための背景情報を得ることができる。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、そうした情報開示のためのフレームワークを提供している。その提言は世界的に支持されており、欧州の基準を策定する上で基盤となる。

気候関連のリスクと機会を把握することは、企業が有意義な戦略を立てる上で極めて重要である[...]

企業が分析や情報開示をする中で注目すべき重要な要素は以下のとおりである:

  • 短期的、中期的、長期的な見通しの中での主要リスク[...]
  • 機会[...]
  • 気候関連リスク・機会の評価結果の企業ガバナンスへの統合[...]

欧州基準は、4つの領域に関して明確な方法論の基準を提示することで、企業を支援し情報開示の妨げとなる障壁をなくすことができる:

  • 気候変動移行計画[...]
  • ベースライン気候シナリオとシナリオ分析ツール[...]
  • リスクと機会に関する各種指標[...]
  • GHG原単位とスコープ3排出量(カーボンフットプリント)のセクター別算出方法[...]

この4つの領域でEUの気候関連情報開示基準を明確に定めることは、移行に取り組む企業を支援する上で極めて重要である。そして、「欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)」に属する「非財務情報開示基準に関する欧州プロジェクトタスクフォース(European Project Task Force on Non-Financial Reporting Standards)」が欧州委員会への最終提案で結論づけているとおり、気候変動に関する基準は、今後のEUにおける企業のサステナビリティ報告フレームワークにおいて早期に優先させるべき項目の一つなのである[...]

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