OHCHR、欧州委員会の「企業の持続可能性デューディリジェンス指令案」に対する見解を提示
[OHCHR Feedback on the Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence] 2022年5月23日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、デューディリジェンスを通じて人権および環境の保護を推進するという欧州委員会の取り組み、ならびに「企業の持続可能性デューディリジェンス指令案」(以下「指令案」)に対する見解を提示する機会を歓迎する。
指令案は、様々なところで発表され、相反するステークホルダーの意見や期待を踏まえて譲歩した内容が反映されている。まず「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」自体が、立場の異なる各加盟国、企業、利害関係のあるステークホルダーとの数年間に及ぶ協議の成果であり、幅広い支持を得るために様々な譲歩が行われた結果、ビジネスと人権に関する権威ある国際基準となったものである点に留意することが重要である。UNGPを法的拘束力のある広く適用される規制基準とする上で直面する課題に対処しようとする際には、政治プロセスを通じたこれ以上のいかなる譲歩によっても、UNGPやその他の関連国際枠組み、特に「OECD多国籍企業行動指針」の重要要素が著しく変更されるべきではない。
OHCHRは、明示されている目標を達成するための同制度の能力を損ないかねない、またUNGPに合致し、それに基づくとする同制度の目的を実際に果たす範囲に関し、当然の疑問を生じさせる指令案の一部の特性について注意するよう要請する。
今回の回答では、UNGPとの整合性を高め、EUが掲げる目標を達成できる規制の枠組みを構築するため、さらに注意して議論する必要があると考える5つの領域を挙げる。
- 適用対象企業
- 対象分野の範囲
- 行動内容(人権への負の影響を防止・軽減するための影響力の利用を含む)
- コンプライアンス、施行、救済
- ステークホルダーエンゲージメント
本来柔軟性のあるUNGPの人権デューディリジェンス基準を、一定の法的確実性が求められる実施可能な法制度とするのは困難であり、難しい選択が必要となることをOHCHRは認識している。上記のコメントは、指令案のUNGPへの整合性を高めるために建設的なフィードバックとなることを目指したものである。OHCHRは、指令案の仕上げに向けたプロセスが次の段階に進む中で、この先もEU関連機関と建設的なエンゲージメントを行う機会を歓迎する。
見解の全文は こちらから。