ビジネスと人権NAP:すべては今後の取り組みにかかっている~NAP公表に際しての市民社会からのコメント~
2020年10月16日
ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)が公表されました。4年近くにわたる策定プロセスは、今後、NAPの実施・モニタリング・改定という新しい段階に入っていきます。
2016年秋に策定を表明して以降、「ビジネスと人権」という新しい課題に対し、取りまとめに尽力してきた日本政府に改めて敬意を表します。
一方、公表された行動計画はなお不十分であり、課題は山積しています。
……ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォームは……策定プロセスのそれぞれの段階で市民社会の立場から一貫して以下の諸点を要請してきました。
- 指導原則への準拠、包摂性と透明性のあるプロセス、定期的な見直しと改定などをNAPの「不可欠の条件」とする国連ワーキンググループの「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」を十分に踏まえること
- NAPの内容を、国際人権基準と指導原則に明確に基づいたものにすること
- ビジネスと人権の問題に関する認識を政府内部で高め、政策の一貫性を確保すること
- 策定プロセスにおいて、関係するステークホルダーと十分な協議を必ず行うこと
- ベースラインスタディを重視し、人権への負の影響の特定及びギャップの特定を漏れのないように行うこと
- 人権への負の影響に対処するための政府の具体的な措置を十分に検討すること
- 社会的に脆弱な立場に置かれた、または周縁化された人々への視点と平等及び非差別の原則を重視すること
- パリ原則に適合した国内人権機関の必要性と設置に向けた道筋をNAPに記述すること
策定プロセスから実施・モニタリング・改定プロセスに移っていく今、私たちは改めてこれらの要請を繰り返さざるをえません。本文30ページにわたる行動計画には、これらの要請内容に関連する記述も一部含まれているものの、現行の施策と実際の人権課題とのギャップ分析が十分になされていないことから、現行の施策の維持にとどまっているものが多くあります。また国際人権条約審査でたびたび指摘されており、指導原則でも救済へのアクセスにおいて重要な役割を果たすとされる国内人権機関に関する議論も不十分です……