中国:ウイグルでの強制労働が疑われる原材料で生産された製品の特定と排除に向けたデューディリジェンスの実施について、オリンピック委員会に対し情報開示を要求
[Uyghur Forced Labour Cannot Be Ruled Out in Beijing Olympics Merchandise] 2022年1月4日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
「ウイグル自治区の強制労働を終わらせるための連合(Coalition to End Forced Labour in Uyghur Region)」は1月4日[...] 、国際オリンピック委員会(IOC)に対して、オリンピック関連商品に使用されているウイグル人への強制労働で生産された原材料を特定・排除するためにデューディリジェンスを実施しているのであれば、具体的にどのような手順で実施いるのか、直ちに情報開示するよう求めた。
IOCがオリンピックと関連づけて強制労働に関するデューディリジェンスの実施を議論することを拒否した一方、米国では12月16日に「ウイグル強制労働防止法案」が下院を通過、12月22日にはバイデン大統領が同法案に署名している。この法律により、新疆ウイグル自治区(ウイグル地区)からの製品の輸入が禁じられる。
IOCの公式ウェアのサプライヤーであるアンタ スポーツは2021年3月[...]、次のように明言している[...]。「当社は常に中国国内で生産された綿を調達して製品を作っている。その中には新疆産の綿も含まれるが、今後も国内の綿を使う方針は変わらない」。IOCはこの声明を[...]危険信号と捉えるべきだったが[...]、IOCとして何らかの対応をしたという情報はない。
ウイグル自治区の強制労働を終わらせるための連合は、昨年8カ月にわたり、オリンピック関連商品の生産にウイグル人の強制労働が関わっていないこと確かめるためにIOCとして実施するべきデューディリジェンスについて、情報の開示と実施の確約をするようIOCに非公式に働きかけてきた。12月21日IOCは、同連合が提案した実質的、建設的かつ相互尊重に基づいた双方向の対話の条件を退けた。
IOCは、サステナビリティ戦略およびIOCサプライヤーコードで「責任ある調達」を約束しており、同連合に対して「IOCは、具体的な環境・社会・倫理的なリスクがあると思われるサプライヤーに対して適宜デューディリジェンスを実施している」と回答し、「第三者による社会監査の委託に着手」したと述べていた。さらにIOCは、10月29日、同連合に対して「今後数ヶ月の間に、製品やサービスのサプライヤーやライセンシーにおけるリスクをより公式に評価するとともに、リスクの高い供給業者に対しては体系的に第三者によるデューディリジェンスを実施することで、調達アプローチの強化と体系化を検討するつもりである」と連絡していた。
だが、第三者によるデューディリジェンスと監査を実施する方法をいまだにただ「検討している」だけというIOCの実際の対応は衝撃的である。[...]
IOCは次のように述べている。「もしオリンピックに直接関係する強制労働が間違いなく疑われるような事案があれば、IOCは組織委員会とともに聞き取りを行い対処する。調査の結果、強制労働の疑いが確認されれば、直ちに問題を修正するよう依頼して、調達を中止する可能性とともに、可能であれば製品の返却や代わりの調達方法についても検する。」[...]
[...]だが今のところ、ウイグル人やそれ以外の強制労働に関して、IOCがそのようなデューディリジェンスや人権影響評価を行ったという証拠はない。また、強制労働やそれ以外の労働、人権リスクについて、IOCが北京オリンピック委員会とエンゲージメントを行ったという情報も一切開示されていない。
IOCが2020年に発表した専門家報告書『IOC人権戦略への提言(Recommendations for an IOC Human Rights Strategy)』には、「オリンピックとつながりがある可能性のある人権への影響は深刻である」と書かれている。同報告書には、こうした提言を「参考にして」人権尊重の取り組みを行っているとあるが、人権リスクや北京2022冬季オリンピックに関してこのような戦略をIOCが実施していることを示す情報はない。[...]