日本:FoE Japan、関係者の理解得ずのALPS処理汚染水の海洋放出に抗議
[声明:ALPS処理汚染水の海洋放出に抗議するー「関係者の理解」は得られていない] 2023年8月22日
本日、日本政府は関係閣僚会議にて、福島第一原発でタンクに保管されているALPS処理汚染水(注1)の海洋放出を、早ければ8月24日にも開始することを決定した。モルタル固化処分などの代替案について公の場で議論がなされることはなく、「海洋放出ありき」のプロセスが強引に進められた。[...] 私たちは、漁業関係者をはじめ国内外での反対や懸念の声を無視した今回の決定に強く抗議する。
1.方針を決めてから「理解」を押し付け
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岸田首相は、20日、福島第一原発を視察し、東京電力幹部と意見交換を行ったが、福島県漁連関係者には会わなかった。21日、岸田首相は全国漁業協同連合会(以下全漁連)と面会ののち、「関係者の理解が一定程度進みつつある」と述べた。
地元の漁業者には会わない上での決めつけは許されるものではない。
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今回の決定プロセスは、先に方針を決めてから、関係者に対して理解を強要することにほかならない。
2. 「海洋放出ありき」で進められた検討
政府の審議会における一連の検討プロセスをふりかえると、代替案の検討は極めて表面的にしか行われず、結論を「海洋放出」に誘導するものであった。
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また、技術者や研究者も参加する「原子力市民委員会」が提案した、「大型タンク貯留案」「モルタル固化処分案」(注8)は、十分現実的な案であるのにもかかわらず、公の場ではまったく検討されなかった。
3.放出される放射性物質の総量が不明
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どのような放射性物質がどの程度残留するか、その総量は未だに示されていない。それどころか、東電が詳細な放射能測定を行っているのは、全体の水の3%弱に相当する3つのタンク群にすぎない(注12)。
東電は、「放出前に順次測定し、測定後、準備が整い次第放出する」(注13)としているが、これでは放出する直前にしか何をどのくらい放出するのかがわからないことになる。また、放出される放射性物質の総量は、すべてのタンク水を放出し終わるまではわからない。
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4.「風評加害」という口封じ
政府は、ALPS処理汚染水の海洋放出の影響を「風評被害」に矮小化している。そして、メディアも政府見解を繰り返し報じている。
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本来、原発事故は人災であり、その加害者は国及び東電である。「風評被害」のみを強調する政府の手法は、メディアの報道ともあいまって、放射性物質の海洋放出の影響やリスクについて指摘することを、「風評加害」とレッテル貼りし、健全な議論を封じることにつながる。
5.意図的かつ追加的な放射性物質の放出は許されない
2011年3月11日の原発事故以降、すでに大量の放射性物質が環境中に放出されてしまった。今回の放出は、それに上積みをする形で、意図的な放出を行うものである。放射性物質は、集中管理し、環境への放出を行わないことが原則である。
私たちは改めて海洋放出に反対し、決定の撤回を求める。