日本:つくるべきは受入制度 労働者を労働者として「適正化」、「管理監督体制の強化」は虚構
今や誰も技能実習制度が開発途上国の技術移転という目的*[1]に適った運営がなされていないことを知っている。本年4月に施行される「外国人建設就労者受入事業」では、ついに政府自ら本音を明かしている。オリンピックや復興のために即戦力としての建設労働者が必要だから技能実習生だというのである。全く理屈にならないことが平然と述べられている。人手不足を補うための労働者受入れとしての技能実習制度となっていることは、政府・官僚、経済界(受入れ企業)、労働団体、そして監理団体も皆知っている。技能実習制度の「意義」は終了しており、「適正化」は虚構である。そのような虚構の議論は直ちにやめるべきである。
労働者不足にあえぐ中小零細企業や農家、水産加工業者たちも開発途上国への技術移転の余裕はない。それにも関わらず、受入れ側には「教える」という錯誤した意識が醸成され、労使関係、使用者責任が欠如している。これが技能実習制度の根本的矛盾であり、不正行為が絶えない理由である。働く現場、生産する現場の待ったなしの窮状、事実に目を背け、技能実習という虚構を作り続けることではこの社会が壊れてしまう。労働者、使用者(事業主)双方を「被害者」へて落とし込めていく。
あとを絶たない「時給300円」、「強制帰国」など人権侵害、法違反の劣悪な労働条件(労働基準破壊)は、その虚の構造から生まれている。「管理」の強化では人身売買構造、奴隷労働構造は解決しない。2007年のアメリカ国務省の人身売買年次報告書での指摘以来、国際条約機関からの報告、勧告なども併せて毎年指摘*[2]されてきている。直近では昨年夏の自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会からの勧告もある。移住者の人権に関する国連特別報告者からは、2011年に「雇用制度に変更するべき」と勧告されている。
「人手不足」と「開発途上国への技術移転」は全く縁もゆかりもないことであるばかりか、日本が先進国であることの傲慢さをさらけだすことともなり、国際社会、とりわけアジアの人びとからの信頼も損なうことになっている。
(原文より引用)