日本:外国人技能実習制度問題 時給300円、休みは年に数日 抗議したら強制帰国 海外からも厳しい目に
…「こんな目に遭うために日本に来たんじゃないのに」。実習生として岐阜県内の縫製工場で働いていた中国人女性(41)は、毎月の給料が振り込まれていた口座の通帳を見つめた。中国・上海の縫製工場で働いていた女性は2012年、家族を残し来日した。中国では多い月に日本円で10万円以上の収入があったが「今より稼げる」と聞き、かき集めた六十数万円を紹介機関に支払って来た。
女性によると、婦人服を作っていた岐阜の工場では、他に中国人実習生7人が働いていた。勤務は1日約15時間、日曜日も夕方まで。残業は月200時間に上り、休みは正月の数日しかなかったという。月給は約12万円。県の最低賃金は現在、時給738円だが、会社からは基本給が5万円、残業代は時給300~400円と説明された。女性は「中国では休みもあった。今は家族とも離れ離れだ」と憤る。
11月上旬、最低賃金のことを知った女性が是正を求めると突然解雇され、帰国を強制された。女性は、数日のうちに中部国際空港に連れて行かれ、出国ロビーの公衆電話から実習生の支援をする労働組合スタッフに助けを求めた。
現在、会社には未払い分を請求しているが、交渉は止まったまま。会社は、社長の不在を理由に取材に応じない。こうして支援団体に駆け込んだ実習生も、交渉が長期化して帰国してしまうケースは多い。取材の後、政府の制度拡充政策の話をすると、女性は声を荒らげた。「帰ったらみんなにこう言う。『日本には行くな』と」…
実習生の人権保護に取り組む「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の 鳥井一平 (とりい・いっぺい) 事務局長の話 労働力不足で外国人の力を借りること自体は否定しないが、技能実習名目でごまかすべきではない。日本人と同じ権利が保障されるきちんとした仕組みで、正規の労働者として受け入れる必要がある。安価な労働力で穴埋めするという人権軽視を許せば、日本の次世代の働き方にも影響を及ぼす。外国人だけの問題ではない。
◎ 外国人技能実習制度
外国人技能実習制度 習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらう趣旨で、外国人実習生を日本の企業などで最長3年間受け入れる制度。1993年に導入、2013年末の実習生は約15万5千人で、中国、ベトナムからが多い。繊維・衣服や機械・金属関係、農業、建設など業種は多岐にわたる。実習生には日本の労働者と同様、労働関係法が適用されるが、人権侵害や賃金不払いの問題が国内外で指摘される。受け入れ拡大を打ち出す政府は実習生保護のためとして、企業に立ち入り調査権限を持つ監督機関を新設する方針。