西アフリカ:ネスレ、サプライチェーンの児童労働排除に向けてカカオ農家に現金支給へ
[Nestlé to pay cocoa farmers to stop using child labour] 28 January 2022年1月28日
[ 英文和訳:ビジネスと人権リソースセンター]
世界最大手の食品メーカー、ネスレはカカオの持続可能な調達を促進するための投資額を8年間で3倍に増加させ、今後は14億ドルまで引き上げる予定だ。この投資額には、サプライチェーンから児童労働を排除することを目的とした、アフリカのカカオ農家への直接支払いが含まれている。
スイスの同グループは、児童労働の根本的な原因である貧困に着目しているという。多国籍食品企業として初めて、チョコレートの2大生産地であるコートジボワールとガーナをはじめとする農家に対して直接支払いを行う意向である。「キットカット」や「エアロ」を代表とする製品に使用されるカカオを栽培する世帯に対して、年間最大500スイスフランの支払いを実施する。
チョコレート業界はサプライチェーンにおける児童労働の対策が不十分だとの批判を浴びている。カカオ栽培は主に熱帯アフリカ、中南米、アジアの小農によって行われており、カカオの木の世話や果実の収穫に子どもが利用されることも多い。
チョコレート業界は貧困をなくすための努力を行なっているが、多くの貧しいカカオ生産国では依然として児童労働が蔓延している。
世界のカカオ生産量の65%近くを占めるコートジボワールとガーナでは、156万人の子どもたちが働いている。シカゴ大の全国世論調査センター・社会調査グループ(NORC)の2020年調査によると、両国の農業世帯の45%で鋭利な道具や農薬の使用や重い荷物の運搬などの労働力に子どもが使われている。
ネスレのマーク・シュナイダーCEOは、次のように述べている。カカオ農家は、子どもを学校に通わせ、剪定などの適正農業規範を実施し、シェードツリーの植樹といった持続可能な対策を行うことで支払いを受けることが可能となる。さらに、追加の作物や家畜など、他の手段で多様な収入を創出した場合にも支払いを受けることができる。コートジボワールの1,000人の農家を対象とした試行プログラムでは、研修と優れた農業実践を通じて生産性と収入を向上させる間に、各世帯に2年間の支払いが行われ、収穫量を最大で3倍まで増やすことができることが示された。
[...]チョコレート業界に対して貧困削減のためにカカオの価格を上げるよう求めてきたキャンペーン関係者は、ネスレの発表は心強いものであると述べている。「カカオの生産性向上と公正な報酬を奨励する広範な戦略の一環として、(直接支払いは)成功する可能性を秘めている」と17の非営利団体からなるVoice Networkのマネージングディレクターであるアントニー・ファウンテン氏は述べている。
同氏は「このプログラムの広範な影響はまだ不透明だが、将来的にはすべての企業が同様の取り組みを行う必要があるかもしれない 」と付け加えた。
パンデミックによるチョコレートの需要変動に伴い、カカオの価格が変動した。また、国境閉鎖に伴い一部のカカオ農家から出稼ぎ労働者がいなくなったことで、カカオの生産に影響を与えた。[...]