デジタル貿易を統制する新たなルールにより、世界経済を支配するハイテク企業の力が強化される危険性があり、人権への影響も懸念されます。
世界の経済活動の多くがデジタル化される中、世界で最も価値のある資源となったのがデータです。Google、Meta、Apple、Amazonなど、データを収集・利用する企業は、世界最大規模で、最も影響力のある企業に数えられています。これらの企業と、その多くが本社を置くグローバルノースは、デジタル市場の開放、規制の制限、法人税の廃止など、世界のデジタル経済をさらに自由化する新しいデジタル貿易ルールを求めてきました。このようなルールは、国家がハイテク企業の行動に対する責任を追及する能力を制限する可能性があります。
テクノロジー企業の活動が人権の実現にとって好ましいものであるように国家が規制できるようにすることは極めて重要です。テクノロジー企業がもたらしうる負の影響は、個人データの漏洩、「ギグ」ワーカーの搾取的雇用、差別を永続させるアルゴリズムの使用など、多岐にわたります。
世界貿易機関(WTO)のルールは1995年に合意されたものであるため、デジタル貿易に関する内容はほとんど含まれていません。WTO規則の改革は、全加盟国の全会一致の支持を必要とするため、なかなか進みません。そのため、デジタル貿易ルールを導入しようという取り組みは、グローバルノースが中心になり開発した自由貿易協定の形で行われ、その自由貿易協定にはますます多くのデジタル貿易関連の大胆な規定が盛り込まれています。さらに、デジタル貿易の自由化は、WTOに加盟する86カ国が参加する電子商取引共同声明イニシアチブで議論されています。この枠組みは、「ビッグテックによる、ビッグテックのための、グローバル経済にとって破滅的な条約」と呼ばれています。
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リソースセンターのテクノロジーと人権プログラムでは、新しい技術によってもたらされる人権リスクやビジ ネスの役割、また、企業対応について取り上げています。